平成25年度は、炊飯米(α化米粉末,processed rice,PR)の投与による遺伝子発現の変化について、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な解析を行った。C57BL/6雌性マウスに、①標準食、②PR食、③標準食+DSS(デキストラン硫酸ナトリウム)、④PR食+DSSを与えた。大腸炎を誘導するDSSは、溶液を飲水として投与した。飼育終了後、肝臓と大腸をDNAマイクロアレイのサンプルとした。また、①と②の糞を3日間採取し、リアルタイムPCR法により菌数の測定を行った。PRはDSS投与による大腸炎を軽減した。遺伝子発現は、PRの投与により、肝臓と大腸のそれぞれで、遺伝子発現に変動が認められた。さらにDSSにより、遺伝子発現の変動幅が大きくなった。肝臓では、DSS投与にかかわらず、抗原結合や免疫グロブリンに関する遺伝子の発現が上昇していた。大腸では、DSS非投与で、各種の免疫グロブリンに関連する遺伝子が見られた。一方、DSS投与では、細胞周期に関係する遺伝子の発現上昇が見られた。PRの投与により、総菌数に対する割合は、Lactobacillusは有意に増加し、Bifidobacteriumは増加傾向が認められた。これらの結果より、PRの投与により、免疫系を賦活していると考えられた。また、大腸の炎症状態では、細胞周期に影響を与え、組織損傷時の修復を早めていると考えられた。さらにPRは、腸内細菌叢を修飾することから、代謝産物の変動が、大腸炎の軽減に影響している可能性がある。本研究により明らかにされたPRの作用が、大腸炎の予防、または軽減に関与していることが示唆された。
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