昨年から継続して脂肪酸結合蛋白XとGLUT4小胞と両者の結合を介在する小胞結合蛋白であるCSP1(Cysteine string protein 1)の解析を行いCSP1は、インスリン抵抗性状態で発現が増加し、GLUT4の細胞膜融合を抑制することが見出され(Jambaldorji B et al. J Med Invest. 2013;60(3-4):197-204)ており、CSP1の発現が減ると脂肪酸結合蛋白Xの発現が増加することより、GLUT4のトランスロケーションには相反する効果を認めることが推測される。お互いを制御している蛋白の候補は質量分析で見つかっており、遺伝子改変法を使用して解析を行った。 また、昨年までの解析で脂肪酸結合蛋白Xがインスリン依存性のGLUT4細胞膜移行低下による糖取り込み減少への関与も見出している。GLUT4は、細胞骨格タンパクであるチュブリンをレールとして細胞膜に移動することが報告されている。脂肪酸結合蛋白Xとチュブリンとの関連を見出しており、インスリン刺激による細胞内骨格蛋白のrearrangement後の細胞内骨格と脂肪酸結合蛋白X結合することで関与している点を確実化するために免疫沈降法や免疫染色法などのアプローチを行っており、それらの結果を学会などで報告した(興津、保坂、その他 日本糖尿病学会2014年、黒田、保坂、その他 日本肥満学会 2014)。この細胞骨格と 脂肪酸結合蛋白Xとの関与にCSP1が関与しているか?、または別の段階で関与しているかは未だはっきりはしていない。 脂肪酸結合蛋白Xに結合する脂肪酸の質に関しては、アフィニティ解析からアラキドン酸などの数種の脂肪酸を見出したところであり、実際にそれらの脂肪酸がインスリン感受性に関与しているか?の量、時間軸での解析やin vivoでの関与は解析が終了しておらず、今後の課題となる。
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