研究課題/領域番号 |
24500998
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
海野 知紀 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (90439753)
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キーワード | 腸内細菌 / ヘスペレチン / ヘスペリジン / 短鎖脂肪酸 / エピガロカテキンガレート |
研究概要 |
大腸には多種の腸内細菌が生息しており,その菌叢バランスが免疫機能,肥満進展に関連していることが指摘されている。平成24年度には,エピガロカテキンガレート(EGCG)の摂取がラットの糞排泄量を増加させ,さらにClostridium属の割合を有意に減少させることを明らかにした。平成25年度はさらにこれを発展させて,糞中の腸内細菌数についてリアルタイムPCRによる解析を行った。その結果,EGCGの摂取による糞抽出DNAのリアルタイムPCRのコピー数には有意な差が認められなかった。このことから,EGCGの摂取は腸内細菌数は影響せず,菌叢バランスのみを調整することが示唆された。 一方で,平成25年度のもう一つの研究として配糖体ポリフェノールであるヘスペリジンとそのアグリコンであるヘスペレチンについてラットの腸内細菌叢へ及ぼす影響を比較した。ヘスペリジン,ヘスペレチンをそれぞれ1.0%,0.5%となるように混餌し,3週間与えた。飼育3週目に回収した糞を用いてT-RFLP解析した結果,コントロール群と比較してヘスペレチン群にてClostridium属の有意な低下が観察された。この効果はヘスペリジン群では認められなかった。盲腸内容物中の短鎖脂肪酸もヘスペレチン群でのみ有意差が得られた。in vitro実験系にてヘスペリジンとヘスペレチンのα-アミラーゼ活性に及ぼす影響を確認したところ,やはりヘスペレチンにのみ阻害効果を示した。以上より,ヘスペレチンはデンプンの消化を一部抑制し,大腸へ流入したデンプンの未消化物が腸内細菌によって資化され,短鎖脂肪酸の生成が増加したと推察された。一方,ヘスペレチン群においてClostridium属の割合が減少した機序は,ヘスペレチンの直接的な抗菌作用によるものなのか,あるいは盲腸内の短鎖脂肪酸の増加に伴う二次的影響であるのかは今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
茶ポリフェノールを実験動物に摂取させたときに得られた糞サンプルを用い,腸内細菌叢並びに菌数の推定に関する実験が終了した。この結果をもって考察を進めるとともに,論文掲載が決まった。さらに,ポリフェノールの化学構造による影響が重要であるとの推測のもと,配糖体とアグリコンによる比較実験も開始した。以上より,現在までの達成度としてはおおむね順調に進展している評価される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成26年度は,実験動物の腸内細菌叢や盲腸内発酵代謝産物に及ぼすポリフェノールの構造の重要性を調査する目的で,高分子ポリフェノールをラットに摂取させた場合について影響評価を進める。具体的には紅茶由来のポリフェノールを投与し,糞サンプルを用いたT-RFLP解析を行うとともに,盲腸内容物中の短鎖脂肪酸の測定を実施する。一方,腸内細菌叢のバランスが肥満の進展に関連するとの知見を踏まえ,高脂肪食等によって惹起する肥満関連指標とポリフェノールの関連性に関して,予備的検討を行う。
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