研究実績の概要 |
本研究は社会心理学, 映像解析学, センサ工学を融合した手法により共食の場を定量的に解読し, 共食相手との対面コミュニケーションが新奇食物の受容に及ぼす影響の心理・行動モデルを構築するものである. H26年度は, (1) 食事をしながらの二者会話の分析, (2) 遺伝子組換え食品に対する消費者の行動意図を規定する要因に関する調査, (3) SNS (social networking service) を通じての食写真投稿といった現代の新しい食コミュニケーションが食物受容に及ぼす影響を調べる前段階としてのSNSでの記事投稿時のユーザ認知に関する調査を実施した. (1) に関しては, 食事の種類による直接的な効果はみられなかったものの, 食事時間の長さが対面コミュニケーションの積極性や自己開示量に影響を及ぼすことが示唆された. (2) に関しては, 遺伝子組換え食品に対するステレオタイプが態度や購買行動意図に影響を及ぼすことが示唆された. (3) に関しては, 特定のSNSユーザに対するステレオタイプがアカウント設定や記事公開に影響を及ぼす可能性が示された. 今年度および研究期間全体を通じての成果から, 食コミュニケーションにはステレオタイプや自己提示といった社会心理学的要因が影響を及ぼすことが示されたといえる. 新規食物の受容においても消費者「個人」に向けた受容プロセスのみならず, 消費者間の社会的相互作用まで考慮した受容プロセスを考慮する必要があるといえよう.
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