研究課題/領域番号 |
24501000
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷中 昭典 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80272201)
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キーワード | 低線量放射線 / 大腸がん / スルフォラファン |
研究概要 |
本研究では、第一に低線量放射線の長期的な被曝が大腸粘膜病態に及ぼす影響を明らかにすること、第二に放射線被曝による発がんを 予防するための手段として、酸化ストレス応答能を増強する食品の摂取が有効であるか否かを検証することを目的として、以下の方法で検討することにした。 1.低線量放射線の長期被曝が大腸粘膜に及ぼす影響について ① In vitro での検討:放射性セシウム(Cs137) が大腸粘膜上皮由来 の培養細胞の細胞生存率、増殖能、DNA 傷害、酸化ストレス応答関連遺伝子、抗酸化酵素発現に及ぼす影響について検討する予定であった。しかしながら、H25年度時点において、筑波大学RI施設ではCs137の取り扱いが許可されていない状況が続いており、H25年度において、上記の実験を行うことは出来なかった。② In vivo での検討:筑波大学の動物実験施設では、試薬としての放射性セシウムをマウスに投与して長期的な経過を観察する実験が規則上認められていない状況であったため、実験プロトコールを一部変更し、茨城県内から採取した放射性セシウム(Cs137+Cs134)含有土壌を餌に混入して経口投与する方法で、in vivo において放射性セシウムを長期間(8週~16週)被曝させる実験を行った。その結果、正常のマウスにおいては、 放射性セシウムによる被曝は、大腸粘膜に明らかな影響を及ぼさなかったが、あらかじめ発がん物質であるアゾキシメタンを前投与したマウスにおいては、アゾキシメタンによって誘発されるaberrant crypt foci (ACF)の発生数が、放射性セシウムの被曝により有意に増加した。 2.抗酸化剤スルフォラファンの放射線障害予防効果について、25年度に得られた成績に基づいて、スルフォラファンに放射線障害予防効果が認められるかどうか、この実験系を用いて検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
In vivoの実験については、25年度に新しく作成した実験プロトコールがうまく機能したことによって、概ね当初の計画通りのペースで実験が進行した。In vitroの実験については、筑波大学の実験施設において、未だにRI試薬としての放射性セシウムが使用できない状況なので、現状では断念せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、in vivo の実験に絞って、以下の2点について実験を進める予定である。 1.16週間よりもさらに長期的な被曝がマウスの大腸化学発がんモデルに及ぼす影響について、現在、マウスに放射性セシウムを24週間被曝させる実験を行っており、26年度前半にはその実験が終了する予定である。 2.スルフォラファンの放射線障害に対する予防効果について 25年度に得られた実験結果を踏まえて、スルフォラファン含有食品であるブロッコリースプラウト、およびスルフォラファン前駆体であるスルフォラファングルコシノレート(Sulforaphane Gluco Sinolate: SGS)をマウスの餌に混入して、放射性セシウム含有土壌と同時に投与する実験を計画している。この実験により、本研究の最終目的である低線量放射線の長期被曝により、誘発される大腸腫瘍の予防がスルフォラファン含有食品の定期的な摂取によって可能か否かが明らかにされることが期待される。
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