研究実績の概要 |
本研究では、第一に低線量放射線の長期的な被曝が大腸粘膜病態に及ぼす影響を明らかにすること、第二に放射線被曝による発がん予防手段として、酸化ストレス応答能を増強するスルフォラファン含有食品の摂取が有効であるか否かを検証することを目的に、以下の方法で検討した。 1.低線量放射線の長期被曝が大腸粘膜に及ぼす影響について ① In vitro での検討:放射性セシウム(Cs137) が大腸粘膜上皮由来 の培養細胞の細胞生存率、増殖能、DNA 傷害、酸化ストレス応答関連遺伝子、抗酸化酵素発現に及ぼす影響について検討する予定であったが、筑波大学RI施設ではCs137の取り扱いが許可されていないため、実験プロトコールを変更し、RI試薬としてのCs137の代わりに、筑波大学の周辺で採取した低線量の放射性セシウムを含む土壌を餌に混ぜてマウスに投与することによっ て、実験を行った。実験方法として第一に、放射性セシウムがin vivo におけるマウスの大腸に及ぼす影響を検討するために、正常マウス、及び化学発がん剤Azoxymethane (AOM)感作マウスに対して放射性セシウム(1,000 Bq/kg) を2~6ヶ月間経口投与し、大腸粘膜、及び大腸発がんに及ぼす影響について検討した。その結果、 放射性セシウム含有餌投与は、正常マウスの大腸粘膜に影響は及ぼさなかったが、AOM感作マウスでは、AOMにより誘導される大腸のAberrant Crypt Foci (ACF)、及び大腸腫瘍形成を促進させることが明らかになった。第二に、抗酸化食品成分であるsulforaphaneが、放射性セシウムの大腸発がん促進作用を抑制するか否かを明らかにするために、AOM+放射性セシウム投与マウスにSFNを6ヶ月間投与する実験を開始した。この実験はH27年度の前半に終了する予定である。
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