研究課題
本研究課題は,食事記録調査の精度向上と調査者のスキルアップに資するために、食事記録調査の信頼性に影響する諸因子の関連を定型化して、モデル設計をする。今年度までに,全国10地区(千葉,名古屋,岡崎,浜松,滋賀高島,京都,佐賀,徳島,山形市,山形鶴岡),地域で生活している住民(34~74歳)377人を対象に食事調査を行い,その調査プロセスを評価した.なお,この食事調査は,大規模コーホート研究(J-MICC:日本多施設共同コーホート)の食物摂取頻度質問票の妥当性・再現性研究の参照基準となる調査である.食事の季節変動,個人内変動を考慮するために,調査期間は四季節を通じて実施し,平日2日と休日1日を含む隔日3日間の食事について,写真付きの秤量記録法で調査した.この調査は遠隔地にある複数の機関で共同実施するので、データ回収はe-メールを用いた。データクリーニングの手順は、a)入力値が通常の食品重量の範囲を逸脱した、b)料理の塩分濃度が3%超,または0.3%未満、c)揚げ物なのに油脂食品が無い、d)料理名称が入力漏れ等、10項目以上の条件を策定し、入力過誤検索用データベースと用いて過誤の可能性があるデータを抽出することで効率化できた。また、e-learning管理システムを用いた試験を実施することで、栄養計算ルールの学習や重量推定技能が担保できた。画像共有Webアプリを活用した結果、多施設で同時に写真を閲覧しながら討議できた。コード化困難事例は構造化webフォームを設けることにより、スタッフ間で共有化が可能になり、報告事例127件の内104件は嗜好品、穀類、調味料、魚類で、熱量、脂肪、Naへの影響が懸念要因だった事が、明らかになった。
3: やや遅れている
本研究の食事記録調査は、複数の調査地区で各々が遠隔地であることを想定して、調査スタッフの訓練、食品のコード化の標準化、データクリーンニングなどのプロセスで、Webツールを開発している。Webツールの運用過程では、各地区における調査者スキル,調査ニーズに適応できるようにするために,ツールの運用状況を微調整する必要が生じている.研究期間が後半になるにつれて,食事記録調査データの提出が遅れている地区が出始めており,本研究で開発したツールの最終評価が遅れている.
引き続き、食事記録調査の信頼性に影響する諸因子の定型化、モデル設計に関する方策は、食事調査支援Webツールの開発・運用・改善というサイクルで進展させる。webツールは、食事の暗黙知・経験知をデジタル情報として扱うことなるので、モデル設計の手法として、優先度が高いと考えている。しかしスタッフが気づいていない事項で、信頼性に影響する因子も潜在していると思われるので、丁寧な考察を進めていきたい。また、欧米の食事調査は24時間思い出し法が主流なので、対象者の記憶を可視化する写真集や調理済食品を多数収載した食品成分表等の支援ツールが充実している。食事調査の標準化および信頼性については、他の研究者も様々な具体策を実践しているので、資料を収集していきたい。
この研究では,大規模コーホートの食事評価手法を研究対象にして,食事記録調査の制度向上に資する支援ツールの開発を行ってきた.全国11カ所のデータ提供地区のうち,複数の地区で,調査原票・食事写真などの試料提出が遅れ始めた.また,各地区で入力された食事データの中には,想定以上に正確性に欠けるものも生じていたので,今後,主任研究者が入念な修正作業を行う必要が生じた.
主に,食事写真・記録ノートと入力データを照合する作業の謝金を執行する.また食事写真から食品重量を見積もる過程について,管理栄養士のスキルを向上させるツールを開発する計画である.
すべて 2015 2014
すべて 学会発表 (7件)