研究課題/領域番号 |
24501008
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
千原 猛 藤田保健衛生大学, 藤田記念七栗研究所, 講師 (00217241)
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キーワード | GFO混合物 / 高温高圧処理ニンニク / デキストラン硫酸ナトリウム / 潰瘍性大腸炎 |
研究概要 |
大腸癌の減少を目指す試みの一つとして、そのリスクファクターである潰瘍性大腸炎の予防・症状改善は大腸発癌の予防につながると考えている。我々はこれまでに、連携研究者の東口らが腸管への臨床効果を報告している経口栄養食品GFO(G:グルタミン、F:水溶性ファイバー、O:オリゴ糖)と同等のGFO混合物のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルでの検討の結果、GFO混合物は大腸粘膜組織保護作用によると考えられる効果を報告してきた。また、その混合物に抗炎症作用等が期待される健康食品素材の添加が有効と考え、昨年、その候補として我々が作製した高温高圧処理ニンニク(HTPG)を用い検討した結果、HTPGの低濃度~中濃度混餌投与で同モデルに対し有用である可能性が示唆される結果を得た。 そこで本年は、GFO混合物とHTPGの混合による同モデルへの修飾作用をそれぞれの単品とともに検討した。雌性C57BL/6Jマウスを1~5群に分け、飲水は1群に水、2~5群に2%DSS溶液を与えた。HTPGは低濃度混餌として3と4群に、それ以外は基礎飼料を与えた。また、GFO混合物(高濃度)は経口投与で4と5群に1日2回与え、他の群には同量の水を投与した。実験開始7日後に、同モデルの特徴である大腸の萎縮度を示し大腸長(盲腸を除く)を測定した結果、2群(陽性対照群)に対し1群(陰性対照群)、3群、5群は有意にその短縮を抑制した。また、肥厚度(大腸重量と大腸長の比)は2群に対し1群と3群で有意に低値であった。HTPGおよびGFO混合物のそれぞれの単品投与では抑制効果がみられたが、両者の混合投与の4群では有意な効果がみられなかった。 現在、単品での抑制機序の再確認として炎症関連サイトカインの大腸粘膜mRNA発現の分析を進めるとともに、混合投与でなぜ相加あるいは相乗効果がみられないかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はこれまでにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルにおいて大腸粘膜組織保護作用が示唆されているGFO(G:グルタミン、F:水溶性ファイバー、O:オリゴ糖)混合物と健康食品素材の高温高圧処理ニンニク(HTPG)の混合で、マウス潰瘍性大腸炎モデルの抑制効果を確認し、そのメカニズムを明らかにすること。そして、前述の結果が早期に得られれば、その混合による大腸前がん病変、ムチン枯渇巣(mucin-depleted foci;MDF)に対する修飾作用を検討する予定であった。 しかしながら、それぞれの単品ではマウス潰瘍性大腸炎モデルにおいて弱いながらも良好な結果が得られたが、混合では有用な結果がみられなかった。その原因検討(GFO混合物の濃度等)に非常に時間を要した。なお、現在も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、25年度に有用な抑制効果がみられなかった高温高圧処理ニンニク(HTPG)とGFO(G:グルタミン、F:水溶性ファイバー、O:オリゴ糖)混合物との混合によるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルに対する修飾作用の検討を引き続き行う。25年度はGFO混合物全体の濃度を変更し検討したが、本年度はG、F、Oのそれぞれの組成濃度を変更して検討を行いたい。中でもまず免疫担当細胞や腸管粘膜細胞のエネルギー基質として作用するGの濃度を変化させ検討を行いたい。 実験は次のように行う。雌性C57BL/6Jマウスを1~9群に分け、次のように飲水と飼料を与える。1群には水、2~9群には2%DSS溶液を与え、1、2、7~9群には基礎飼料、3~6群にはHTPG低濃度混餌を与える。そして、4~6群、7~9群にはGFO混合物のGの混合比率をこれまでの1/10、1/5、1/3にしたものを25年度と同濃度で1日2回経口投与する。実験開始7日後に次の測定を実施する。①実験期間中は毎日体重測定、便性状、血便の状態観察を行い、潰瘍性大腸炎の活動指標であるDAI(disease activity index)スコアを算出し各群で比較。②大腸の萎縮度、肥厚度の測定。③潰瘍性大腸炎発症に関与するマクロファージ炎症性タンパク質-2(MIP-2)とプロスタノイド合成酵素(COX-2)の大腸粘膜mRNA発現レベル測定。④炎症関連サイトカインIL-1β、IL-6、GM-CSF(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子)の血漿中濃度測定、⑤病理組織標本による炎症状態の各群間の比較。なお、抑制効果がみられない時はFとOの混合比率も変化させる。 また、上記実験が早期に明確な抑制効果が認められた時には、大腸前がん病変、ムチン枯渇巣(mucin-depleted foci;MDF)の修飾作用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は昨年度の結果より、検討しているデキストラン硫酸ナトリウム誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルにおいて、経口栄養食品と健康食品素材の混合が相加あるいは相乗効果がもたらすことが予測された。そして、そのメカニズム解明とともに生化学的マーカーとして血漿中の炎症関連サイトカイン濃度を測定しようと計画していた。しかしながら、実験の結果、上記モデルに対し相加あるいは相乗効果も認められず炎症関連サイトカインを測定することができなかった。 26年度の検討を実施するにあたり、下記の試薬等が必要となる見込みである。①マウス購入費および飼育維持費(飼料、床敷き)。②マウス潰瘍性大腸炎誘発試薬のデキストラン硫酸ナトリウム購入費。③血漿中の炎症関連サイトカイン濃度測定のためのEnzyme-Linked Immunosorbent Assay(ELISA)キット購入費。④潰瘍性大腸炎発症関連ケモカイン、サイトカイン、酵素等の大腸粘膜mRNA発現レベル測定用RNA抽出キット、リアルタイムPCR用試薬購入およびプライマー合成費用。⑤病理組織標本作製用試薬。
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