現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はまず脂肪酸組成の異なる各種油脂摂取が脂質代謝とNrf2系による酸化ストレス制御に及ぼす影響を系統的に検討した。雄性C57BL/6Jマウスを用い標準飼料(AIN-93)に準拠して作成した脂肪酸組成の異なる食事(10%大豆油、10%ラード、10%魚油含有飼料)にて飼育した場合、n-3不飽和脂肪酸を多く含む魚油群にて血清、肝臓中のtriglyceride, cholesterolは有意に低く、肝臓および小腸での脂肪酸分解(PPARα, ACOX,など)、コレステロール代謝(LXRα,ABCG5/G8)、胆汁酸代謝(Cyp8b1, Cyp27a1,Baat, Bsep,Mrp2, Mrp3)関連のRNA発現が亢進しており、脂肪酸組成の差は肝臓に加え小腸においても脂質・胆汁酸代謝に影響する事が明らかとなった。Nrf2 knockout miceにおいてはこれらの遺伝子産物発現がwildに比べて高く、魚油の効果は少なかったことから魚油による脂質・胆汁酸代謝への影響にNrf2系の関与が示唆された。次にコレステロール吸収がNrf2による酸化ストレス制御系に及ぼす影響を検討した。コレステロール吸収を阻害した群(ezetimibe投与群)作成し、ezetimibe投与が肝臓におけるNrf2系(Nrf2, Nqo1, Ho1など)の発現増加をみた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果を踏まえ、コレステロール吸収がNrf2による酸化ストレス制御系に及ぼす影響を系統的に検討する。方法としてはNrf2ノックアウトマウスと野生型のマウスをAIN-93に準拠して作成した脂肪酸組成の異なる7%大豆油、7%ラード、7%魚油含有飼料にて飼育した群、各々のコレステロール吸収に及ぼす影響を検討するために1%コレステロールを加えた食餌を与えた群、各々にezetimibe (0.005%)含有した食餌を与え小腸でのコレステロール吸収を阻害した群を作成し、肝臓の脂質組成、酸化ストレスマーカー、脂質、胆汁酸、酸化ストレス系の遺伝子産物を計測する。さらに様々なNrf2アクチベーター(oltiplaz, sulforaphane, isothiocyanatesなど)を用いて、酸化ストレス制御は脂質代謝に如何なる影響を与えるのかを検討する。
|