研究課題/領域番号 |
24501012
|
研究機関 | 千里金蘭大学 |
研究代表者 |
實寳 智子 千里金蘭大学, 生活科学部, 教授 (70252658)
|
キーワード | 抗アレルギー / 精油 / マスト細胞 / 脱顆粒抑制 / PCA反応 |
研究概要 |
近年、日本では花粉症、食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患に罹患する人がますます増えている。アレルギー性疾患にかかると日常生活に多大な影響を与えるのでその対策は急務である。この即時型アレルギー性疾患の発症には免疫グロブリンEを介したマスト細胞の脱顆粒が必須である。従って、この脱顆粒反応を抑えることができればアレルギー反応の軽減あるいは予防ができる可能性がある。 そこで、マスト細胞の脱顆粒抑制効果を指標としてスクリーニングを行った結果、レモングラス精油にその効果があることが判明した。レモングラス精油はマスト細胞の生存率には影響を与えないので細胞が死んで脱顆粒反応が抑制されるわけではない。また、生体内での即時型アレルギー反応のモデルとして受身皮膚アナフィラキシー(PCA)反応がよく使われる。レモングラス精油はマウスを用いたPCA反応も抑制することがわかった。 次に、レモングラス精油に含まれる有効成分について検討した。レモングラス精油の主成分はゲラニアールとネラールの異性体が1:1の分子比で構成されているシトラール、ゲアニオール、酢酸ゲラニル、リナロール、カンフェンである。これらの成分について検討した結果、シトラールが強い脱顆粒抑制効果とPCA反応抑制効果を示した。レモングラス精油の抗アレルギー効果はこれらの成分によってもたらされると考えられる。 このようにレモングラス精油はin vitroとin vivoの実験系で抗アレルギー効果が示されており、今後アレルギーを軽減あるいは予防する物質として期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験の目的は抗アレルギー効果を示す物質を探索して、その作用機序を調べることである。マスト細胞の脱顆粒は即時型アレルギー反応に必須であるのでこの脱顆粒を抑制する物質を探索した結果、レモングラス精油がマスト細胞の脱顆粒を抑制することを見出した。レモングラス精油は細胞の生存率には影響を与えないので、細胞が死んで脱顆粒抑制が起こるのではないことがわかった。さらに、PCA反応を用いて調べた結果、マウスにおける即時型アレルギー反応の抑制を抑制することがわかった。これらのことはレモングラス精油の抗アレルギー効果を示唆するものであり、当初の目的はおおむね果たしていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の結果、レモングラス精油が抗アレルギー効果を有する可能性が示唆された。今後はこの作用機序について検討する。具体的には、レモングラス精油が細胞の情報伝達経路に対して阻害効果を示すのかどうか、あるいは、細胞表面のIgEレセプターの発現に対する阻害効果などについて調べる。また、アレルギー反応が長期化して慢性炎症をおこすと症状の悪化がおこったりするので、アレルギー性慢性炎症反応について調べる実験系を構築して、レモングラス精油の効果を調べる。さらに、ほかの精油に関しても抗アレルギー効果の検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
細胞表面のたんぱく質の発現を調べる解析機器の購入を予定していたが、解析ソフトとあわせると、使用できる金額を上回ったために、購入を見送った。 細胞表面のたんぱく質の発現を調べる解析機器と解析ソフトとあわせて、購入可能な機器を再検討する。あるいは、別の方法がないかについても見当を行う。
|