研究課題/領域番号 |
24501012
|
研究機関 | 千里金蘭大学 |
研究代表者 |
實寳 智子 千里金蘭大学, 生活科学部, 教授 (70252658)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 抗アレルギー / 精油 / マスト細胞 / 脱顆粒抑制 / サイトカイン産生抑制 |
研究実績の概要 |
近年、日本では食物アレルギー、花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの即時型アレルギー性疾患に罹患するヒトが増加している。アレルギー性疾患に罹患すると日常生活に多大な影響を与えるのでその対策は急務である。この即時型アレルギー性疾患の発症にはマスト細胞の脱顆粒が必須である。そこで、マスト細胞の脱顆粒を抑制できればアレルギー反応の軽減あるいは予防が出来ると考えた。 マスト細胞の脱顆粒を抑制することができる物質のスクリーニングを行った結果、βーグルカンにその効果があることが判明した。βーグルカンはマスト細胞の生存率には影響を与えない。またβーグルカンは生体内での即時型アレルギー反応のモデルとして一般的に使われる受動皮膚アナフィラキシー反応もマウスで抑制することがわかった。次に、ヒトに対しても効果があるかどうかを検討した。花粉症患者を対象としてβーグルカンを経口投与したところ、鼻づまりや涙がでるといった花粉症に特有の症状が軽減されることが示された。これらのことからβーグルカンには即時型アレルギー性疾患を抑制する作用があると考えられる。 さらに、精油の脱顆粒抑制効果を調べたところ、ゼラニウム精油がマスト細胞の脱顆粒抑制効果を有することがわかった。ゼラニウム精油はマスト細胞の生存率には影響を与えない。さらに、ゼラニウム精油は炎症性サイトカインであるTNF-alphaの産生を抑制することがわかった。現在、ゼラニウム精油の有効成分の特定と脱顆粒抑制効果あるいは炎症性サイトカイン産生の抑制作用のメカニズムの検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は抗アレルギー効果を示す物質を探索して、その作用機序を調べることである。マスト細胞の脱顆粒は即時型アレルギー反応に必須であるのでこの脱顆粒を抑制する物質を探索した結果、ゼラニウム精油がマスト細胞の脱顆粒を抑制することを見出した。ゼラニウム精油は細胞の生存率には影響を与えない。このことはゼラニウム精油がマスト細胞の生存に影響を与えて脱顆粒を抑制しているわけではないことを示している。また、ゼラニウム精油は炎症性サイトカインの産生も抑制することを見出した。今後は有効成分の特定と作用機序について検討する予定である。 これまでの実験結果からカモミール精油、レモングラス精油、ゼラニウム精油がマスト細胞の脱顆粒抑制効果を有することがわかった。これらのことは、さまざまな精油及びその成分に抗アレルギー効果があることを示しており、当初の目的は概ね果たしていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
ゼラニウム精油の有効成分の特定と作用機序の解明に関してはこれからの課題である。本年度は、このゼラニウム精油の主な成分であるシトロネロール、ギ酸シトロネリル、ゲラニオール、イソメントンなどのどの成分にマスト細胞の脱顆粒抑制や炎症性サイトカイン産生抑制効果があるのかを調べて有効成分の特定を行う。また、これらの作用機序に関して検討するために、ウエスタンブロットを行い、細胞内情報伝達系に与えるゼラニウム及びその有効成分の影響を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請者は、ゼラニウム精油がマスト細胞の脱顆粒を抑制することとマスト細胞によるTNF-alphaの産生を抑制することを見出した。論文を投稿した結果、有効な成分の同定と作用機序について検討するように指摘された。そこで、分析したゼラニウム精油の主な成分の活性を測定するため、化合物をメーカーに注文したところ、一部について純度の高い化合物が得られず、提供が遅れるとの連絡があった。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在複数の試薬メーカーに問い合わせをしている。この化合物が入手できれば、ただちにマスト細胞の脱顆粒に対する抑制効果及びTNF-alphaの産生抑制効果について検討する。また、ゼラニウム精油とその成分については、細胞内情報伝達に関与するたんぱく質のリン酸化に対する影響を検討する。これらの実験を行うことによりゼラニウム精油及びその主要成分の抗アレルギー効果を明らかに出来ると考える。
|