研究課題/領域番号 |
24501014
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
栗原 伸公 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (10234569)
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キーワード | 血圧 / カプサイシン / ジンゲロール / NO / eNOS / mRNA / 高血圧予防 / 2K1C |
研究概要 |
腎血管性高血圧2K1Cモデルラットに、モデル導入手術後カプサイシンやジンゲロールを一定量食餌に混ぜて継続的に投与すると、高血圧の発症が抑えられ、血圧は対照群と同レベルとなる。この観察は10週間続けても同様の結果が見られた。本研究の目的は、このメカニズムを明らかにすることにより、この効果をヒトでの実際の高血圧予防に応用する方法を探ることである。 本年度は、このメカニズムに対するeNOSmRNAの関与を調べた。これまでの実験結果において、非特異的NO合成阻害剤L-NAMEを投与した群ではこの抑制効果が見られなくなることから、この効果にNOが関与していると考えたからである。コントロール食を与えた群では、対照群であるSHAMモデルに比べ、2K1C群において血圧の上昇が見られるとともに、大動脈でのeNOSmRNAの発現が上昇していることが観察された。この上昇は、血圧上昇に伴い代償的に生じたものであると考えられた。また、この2K1C-コントロール食群に比べ、2K1C-カプサイシン食群では、血圧の上昇が有意に抑制されている一方、eNOSmRNAがさらに上昇している傾向が見られた。このことから、この血圧上昇抑制は、eNOSmRNAの発現上昇が関与している可能性が示唆された。すなわち、カプサイシンの投与により、TRPV1レセプターが刺激され、CGRP、SPを介してeNOSmRNAの発現が上昇し、その結果NO産生が上昇して、血圧の低下すなわち高血圧モデルでの血圧上昇抑制がもたらされる可能性が考えられた。 一方、血圧の上昇を見ないSHAM対照群では、カプサイシン食投与群でも、eNOSmRNAの発現上昇が見られなかった。このことは、血圧が下がらないこととは理論的には合致しているものの、両群に同様にカプサイシンを投与しても異なる反応を示す理由は明らかではない。このことは今後の研究課題の1つとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた細かい項目については達成できていないところがいくつかあるものの、この研究の目的である「メカニズムの探究」のなかで、最も中心的なものと位置づけていたeNOSmRNAの関与に関して、さまざまな試行錯誤を重ねた上で、上で示したように一定の結果が得られたことは、非常に大きな意味があるものと考えている。今後はこの結果をもとに、本研究をさらに発展させていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、eNOSの関与をさらに詳細に明らかにするために、Western blotting法を用いて、eNOS蛋白の動態を観察する。その後、ジンゲロールについても同様の観察を行う。 加えて、CGRP、SPなどその他の関連物質についても、細胞レベルでの評価も含めて、可能な限り併せて評価を行って、最後に、本研究で得られたすべての知見から、カプサイシン・ジンゲロールによる血圧上昇抑制の主要なメカニズムの推定を行うものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究でもっとも重要な部分の実験は確実に遂行されているものの、それを補強する実験のなかには、若干予定よりも遅れているものがあり、それらを次年度に行うこととしたため。 本年度分の実験に加え、実施が遅れている分の実験をあわせて行うための費用とする。また当初からの予定通り、研究成果を発表する学会出席や論文発表のための費用としても使用する。
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