研究課題
結核菌は一度感染が成立した個体から排除されることなく、無症候状態で潜伏感染する。結核発症の多くは感染者の免疫力の低下とともに再増殖をはじめた結核菌により引き起こされる。HIV 感染や糖尿病は発症のリスクファクターであり、発症者の増加が危惧されている。本研究は安全な食品機能性成分であるポリフェノールによる結核発症予防および補助的な治療を目指している。昨年度、ヒト単球系細胞株THP1細胞をマクロファージに分化し、結核菌感染の有無、ケンフェロール(すでに我々が結核菌増殖抑制作用を明らかにしている)の有無でマイクロアレー解析を実施した。本年度はその結果の信頼性を確認するために再度、試料を調整して解析を実施した。それぞれの解析でmRNAレベルにおいて有意に2倍以上の増加(2 up)、半分以下への低下(0.5 down)が見られる遺伝子は527~2361であった。しかし、2回の実験のいずれにも増減が見られた遺伝子は非感染時、ケンフェロールの作用で2 upが55, 0.5 downが73、 感染のみで変動する遺伝子数は2 upが734, 0.5 downが484 であった。結核菌感染時にケンフェロールが存在することで発現が変動する遺伝子は2 upがわずかに17,0.5 downが24と少なかった。結核菌感染時にケンフェロールの存在により菌の増殖が抑制されるが、菌感染のみで発現が制御される遺伝子数が非常に多く、ケンフェロールの増殖抑制作用に関連する遺伝子は検出されにくいが、これらの17 および24の中に含まれているはずである。これらについて非感染、ケンフェロール無添加のコントロールを基準として発現量を比較した結果、蛋白質holding, プロスタグランジン合成、ヒストンの安定化に関する遺伝子発現の有意な増加、アポトーシス、炎症性シグナル伝達に関わる遺伝子発現の有意な減少が観察された。
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