研究課題/領域番号 |
24501018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
田尻 祐司 久留米大学, 医学部, 准教授 (80469361)
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研究分担者 |
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
西 芳寛 久留米大学, 医学部, 講師 (20352122)
山田 研太郎 久留米大学, 医学部, 教授 (10191305)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食行動異常 / 肥満 / 糖尿病 / ホルモン |
研究概要 |
SDT fattyラットは若齢(5週齢頃)から肥満,高血糖,高脂血症を呈する肥満2型糖尿病モデルである。雄性SDT fattyラットの肥満発症前(4週齢),顕在期(8週齢)および加齢期(16週齢)において、採血、胃および視床下部のサンプリングを行った。尚,正常コントロール動物としてSDラットを用いて、同様のプロトコールを行った。 SDT fatty ラットはSDラットに比べて、16週齢の時点ではむしろ体重は軽いが(545±45 vs. 656±37 g)、著明な脂肪量の増加を認め(109±9 vs. 49±7 g)、摂餌量も約2倍であり(61±6 vs. 31±2 g/日)著明な高血糖を呈していた(792±38 vs. 81±7 mg/dl)。SDT fatty ラットの血漿活性型グレリン濃度は4週齢の時点ではSDラットの約半分であったが(7±4.5 vs. 14±9 fmol/ml)、その後増加を認め16週齢ではほぼ同レベルであった(17±4.6 vs. 20±6 fmol/ml)。さらに同ラットの胃でのグレリンおよびそのアシル化酵素(GOAT)mRNA発現量は16週齢ではSDラットの約2倍に増加していた。視床下部のグレリンレセプター(GHSR)発現量はどの週においてもSDと比べ著しく低下していた。SDT faはレプチン受容体の変異を有するため、4週齢の時点ですでに過食を認めるが、その後の摂餌量は遺伝的背景が同じであるZuckerラットに比べても著明に多い。本年度の研究の結果より、グレリンの活性化(アシル化)、GHSRのdown regulationなどグレリン調節機構の破綻が本モデルにおいて認められた過食促進の一因である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していたSDT fattyラットにおける血漿グレリン濃度の測定(RIA)、胃組織のグレリンやGOAT mRNA発現量の測定(RT-PCR)、摂餌量や体重の測定、内臓脂肪など体組成の測定(マイクロX線CT装置)、代謝パラメーター(血糖値、インスリン値、中性脂肪値など)の測定は各週齢においてすべて完了している。さらに、当初の予定に入れていなかった視床下部のサンプリング→GHSRのmRNA測定も追加し、レセプター側の動向も調査している。本モデル動物におけるエネルギー代謝の測定(アルコシステム)、胃の免疫組織染色による胃底部のグレリン陽性細胞数の測定は次年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究結果より、肥満2型糖尿病モデルにみられる過食におけるグレリン分泌および調節メカニズムの破たんが明らかとなった。今後は、制限給餌や絶食など食リズムへの介入を行うことにより、この破たんしたグレリン動態が変化するか否かを調査する予定である。これにより、日常臨床においても規則正しい食生活の指導が過食による肥満の予防につながることの分子メカニズムを明らかにすることが可能となり、肥満治療における食事指導の根拠を科学的に証明する事が可能となる。また、肥満治療のもう一つの柱である運動についても、同時に自発運動の効果をみることによりその有効性が証明できる。 将来的には、肥満を伴う2型糖尿病患者における食行動やグレリン分泌異常の有無,生活習慣介入による効果についても調査する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度研究の糖尿病/肥満時におけるグレリンによる摂食活動メカニズムの解析の継続研究として平成25年度はSDT fattyラットを用い,絶食時や制限給餌の際のグレリン動態の変化を検討し,同時に自発運動によるグレリン動態への影響を明らかにする。SDT fattyラットを用い,平成24年度と同様に4,8および16週齢において以下の解析を行う。 ① 食餌制限によるグレリン動態;48時間絶食後(絶食)および24時間絶食+制限給餌(時間制限給餌,午後6時に給餌)後の胃内,血漿グレリン濃度,胃内グレリンmRNA量の測定・解析し,肥満2型糖尿病における摂餌制限におけるグレリンの役割を明らかにする。 ② 食餌制限による基礎代謝解析;48時間絶食後(絶食)および24時間絶食+制限給餌(時間制限給餌,午後6時に給餌)後の代謝パラメーター(血糖値,インスリン値,中性脂肪値,LDLおよびHDLコレステロール値など)を測定する。また,マイクロX線CT装置(現有設備)による内臓脂肪の変動,エネルギー代謝測定装置(現有設備)を用いたエネルギー消費量,脂肪燃焼や炭水化物燃焼量を経日的に測定し,食餌制限後の基礎代謝の変動を明らかにする。 ③ 食餌制限+自発運動時のグレリン動態と基礎代謝;ラットでは時限給餌後,自発運動が増加する特性(運動負荷)を利用し,24時間絶食+制限給餌後,エネルギー代謝測定装置専用の回転かご付きケージ・チャンバーにて自発運動を促し②と同様の代謝パラメーターを測定し,併せて①と同様のグレリン動態を精査し,自発運動の増加が制限給餌後のグレリン動態へおよぼす影響を明らかにする。
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