研究課題
我々は今までの研究で、クルクミン、リコペン、ノビレチン、カテキンなどのフィトケミカルの乳癌抑制の分子機序を明らかにしてきた。本年度は乳癌のサブタイプ別にリコペンおよびノビレチンについて、その制がん効果の作用機序を解析した。リコペンおよびノビレチンはとくに標準治療の確立していないトリプルネガティブ乳癌細胞に対し、強力な細胞増殖抑制・アポトーシス誘導効果を示した。リコペンは細胞周期をG1 期に停止させ、Baxを誘導することで制がん効果を発揮し(Cancer Sci. 2014; 105: 252-7)、またノビレチンはERK の抑制を介して細胞周期をG1 期に停止させ、Bcl-xL を抑制することでアポトーシスを誘導することを報告した(Anticancer Res. 2014;34:1785-92)。このように抗腫瘍効果の分子メカニズムはフィトケミカルによって異なることが明らかになった。さらに興味あることに、これらのフィトケミカルはmTOR やPARP(Poly ADP Ribose Polymerase)に対しても阻害効果があることが確認されている。さらにリコペンの乳癌発症抑制効果を検討するために、EMS誘発乳癌モデルラットを使用し、0.004%リコペンを飼料に添加して投与すると、非添加群が腺癌を発症するのに比べ、添加群では6割以上が嚢胞状腺腫を形成した。このことはリコペンは癌発生を抑え腺腫にとどめる働きがあることが示唆された。またレスベラトロールよりもBioavailabilityの高いメチル化レスベラトロールは、リコペンと同様にトリプルネガティブ乳癌細胞に効果があり、細胞周期をG1 期に停止させAKT-mTORを抑制することが分かった。最近、トリプルネガティブ乳癌の新しい分子標的としてmTORやPARPが注目されており、リコペンなどのフィトケミカルは乳癌予防とともに治療にも有用である可能性が示唆された。
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Cancer Sci
巻: 105 ページ: 252-257
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Anticancer Res.
巻: 34 ページ: 1985-1792
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