メタボリック症候群の発症および進展のリスク低減に有効な食品成分を探索することを目的として、今年度は、高脂肪食投与マウスの胸部大動脈を用いて、各種ポリフェノールの血管内皮および血管平滑筋細胞に及ぼす効果について検討した。雄性C57BL/6マウスに4週令から15週間、高脂肪食を投与した結果、普通食投与マウスに比べ、体重、精巣上体脂肪量、腎周囲脂肪量、血糖値、血清インスリン濃度、血清コレステロール濃度の有意な上昇が確認された。ケンフェロール、シアニジン、ナリンゲニン、ベルガモチン、ミリセチン等、各種ポリフェノールは、胸部大動脈の等尺性張力において、一酸化窒素(NO)依存性の弛緩反応を示した。高脂肪食マウス由来大動脈において、シアニジン及びナリンゲニンによる弛緩が普通食マウス由来大動脈の弛緩反応より大きい傾向がみられ、さらに、NO非依存性の弛緩反応も観察された。加えて、シアニジン、或いはナリンゲニン存在下でのアセチルコリンによる弛緩効果の増強も観察された。血管内皮細胞でのNO合成系活性化作用以外の効果を示すポリフェノールが見出され、高脂肪食摂取との関連も示唆されたことより、さらに詳しくその機序について明らかにすることが、メタボリック症候群の発症・進展の予防法確立につながると期待される。
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