研究課題/領域番号 |
24501026
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
大西 貴弘 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部第4室, 衛生微生物部第4室長 (30321855)
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キーワード | 食中毒 / 寄生虫 / 微生物 / クドア / 魚 |
研究概要 |
近年、寄生虫性食中毒事例が国内で急増しているが、これまで大規模でかつ頻発する寄生虫性食中毒の発生はほとんどなかったため、寄生虫性食中毒に対する分子疫学的解析はほとんど行われていない。一方、細菌やウイルス性食中毒に関しては、種々の分子疫学的解析手法が開発され実用化されている。近年ではこうした方法が感染源の特定や食中毒事例間での微生物株の比較に威力を発揮している。しかし、寄生虫はゲノムが細菌やウイルスなどと比較して非常に巨大である。また、実験室で人工的に培養できない種が多く、解析に必要な多量のDNAを調整出来ない場合が多い。さらに、分子疫学に利用できるだけの遺伝的多様性が寄生虫に存在するのかどうかなど不明な点は多い。こういったことから、これまでの分子疫学的解析法を寄生虫に対して利用できるか不明な点が多い。本研究では細菌やウイルス分野で利用されてきた分子疫学的解析法の寄生虫への応用を試みる。そのモデル寄生虫として、生鮮魚介類の食中毒の原因として細菌問題になっているKudoa septempunctataを本研究では使用した。本年度はrandom amplified polymorphic DNA analysis(RAPD法)がK. septempunctataの分子疫学的解析に応用できるかどうか検討した。その結果、RAPD法はK. septempunctataの分子疫学的解析法として使用できることが明らかになった。RAPD法の欠点であると考えられている再現性の低さも、複数のRAPDプライマーを使用することによって克服できることが示唆された。RAPD法は必要とするDNAが少量でよいため、限られた量の検体しか入手できないことが多く、また実験室で培養もできないK. septempunctataのような寄生虫の分子疫学的解析法として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寄生虫の分子疫学的解析法として有効な方法を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果から、RAPD法がK. septempunctataの分子疫学的解析法として利用できることが明らかになった。来年度は実際に食中毒事例から回収されたヒラメ、K. septempunctata汚染養殖場からのヒラメ、海外から輸入されたK. septempunctata汚染ヒラメからK. septempunctataを精製し、各K. septempunctata株間の遺伝的関係をRAPD法を用いて解析、考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画が予想よりうまく進んだため、実験条件を検討するための試薬購入費を節約することができたため。 今回発生した次年度使用額は、来年度の研究計画における検体購入費用として使用し、来年度は当初の予定よりも検体数を増やして研究を行う。また、検体数の増加に伴う試薬購入費としても使用する。
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