研究課題/領域番号 |
24501033
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関根 勉 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (20154651)
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キーワード | 放射性セシウム / 福島第一原子力発電所事故 / 放射能 / 放射線 / 放射線教育 |
研究概要 |
平成25年度は、昨年度に引き続き、石巻好文館高校、仙台育英学園等の協力を得て放射線の調査を行ったほか、東北大学川内北キャンパスグラウンドにおいても定期的に詳細に調査した。土壌中の放射性核種の深度分布を本年度も継続して調べたが、K-40、Ra-226、Ra-228 のような天然の放射性核種は深さによる偏りがほとんど無く一定の含有量を示していたのに対し、原発事故により飛散して降り注いだ放射性セシウム(Cs-137, Cs-134)はそのほとんどが表面層(深さ5 cm以内)に現在でも止まっていることが確かめられた。東北大学川内北キャンパスグラウンドの半年ごとの土壌調査では、スクレーパープレートを用いて深さ1 cm ごとにその放射能分布を追跡しているが、その結果、少しずつではあるが放射性セシウムが深部に移行していることがわかってきた。土壌粒子をふるい分けして放射能測定を下結果では、より小さな粒子へのセシウムの吸着濃度が高いことが確かめられていたが、この土壌粒子のX線粉末パターンを調べた結果、主となる鉱物はカリ長石と石英であることがわかった。さらに本年度は、土壌採取のほかにNaI(Tl)検出器を用いた野外測定も並行して行った。これにより教育施設敷地内における放射性セシウムの分布が明確になるほか、教育施設のグラウンドなどの表面土壌の入れ替えによる効果や、建物構造材からの放射線影響などをその場で測定してわかりやすく示すことができ、教育プログラムの実施により情報のフィードバックを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、福島第一原子力発電所事故に伴い環境中に放出された放射性核種(特に放射性セシウム)について、教育施設を中心に継続的な放射能調査を行いながら、その結果を教育プログラムに反映していくことがその活動とねらいである。平成24年度は、ガンマ線検出システムを構築するための検出器を導入し、定常的に環境試料の放射能測定が行えるような環境整備をするとともに放射性核種定量のための準備を行った。並行して、東北大学川内北キャンパスはもとより、石巻好文館高校、仙台育英学園秀光中学校の協力を得て、定期的な土壌サンプリングを行いながら、その放射線測定を行った。教育活動では、両校における参加型理科プログラムをとおして、放射線の基礎講義や霧箱を用いた実験なども行いながら、測定した結果をフィードバックしてきており、ほぼ予定どおりの進行となった。平成25年度からはこれに加えて仙台育英学園宮城野校舎においても同様の測定と教育プログラムを実施した。学校施設内におけるラドン濃度調査も行い、プログラム中で用いる霧箱の放射線源としての使用可能性を検討し、それを教育プログラム実践に活かした。これに加え、平成25年度からは NaI(Tl) 検出器を現場に持ちこみ、教育施設敷地内におけるガンマ線スペクトルのその場測定を行った。その結果を教育プログラム中に組み込むことによってフィードバックしたが、天然由来の放射線成分と人工の放射性セシウムからの寄与を区別することができ、有意義であった。さらに放射性セシウムの土壌中における動きを調べるために本学川内北キャンパスグラウンドの非侵襲場所における詳細な調査、ふるいを用いた土壌粒子分画、土壌粒子のX線粉末解析による鉱物特定もあわせて行うことができ、放射性セシウムの分布や吸着に関してより詳細な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
放射性セシウムの土壌の深度分布を継続的に調査する。特に東北大学川内北キャンパスにおいては非侵襲場所を特定することが可能なので、長い年月にわたる挙動の整理と予測に結びつけ、科学的な寄与をするだけでなく、教育プログラム内にも順次取り込んでいく。また、 NaI(Tl) 検出器による“その場測定”の結果と土壌中の放射性核種濃度(放射性セシウムと天然の放射性核種)の関係も調べ、空間線量率への寄与の基礎情報としたい。一方、教育プログラムでは、多賀城地区の秀光中学校に加え、宮城野地区にある仙台育英高校においてもサイエンスプログラムを利用させてもらい、本調査の結果をフィードバックしていきたいと考えている。そのためには各教育施設における放射能・放射線調査を継続して行っていく必要があり、計画通り、実行していきたい。
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