研究実績の概要 |
平成26年度は昨年度に引き続き、教育施設(石巻好文館高校、仙台育英学園)の協力を得て,土壌調査とin situ におけるガンマ線スペクトル測定を行った。また昨年同様、東北大学川内北キャンパスグラウンドにおける詳細な土壌調査とガンマ線測定も継続して行った。これらの結果については教育プログラムに取り入れ、仙台育英学園(宮城野)において実験付き授業(霧箱の製作による天然放射線の観察及び解説)を行いフィードバックした。 土壌試料の放射性核種の分布については、天然放射性核種(K-40, Ra-226, Ra-228)の深度分布はどの地点で採取した試料においても深さに関わらずほぼ一定であったのに対し、福島原発事故で放出され沈着したCs-134、Cs-137 はまだそのほとんどが表層近くに強く吸着していることが確認できた。事故後約4年を経過し,その間、降雨降雪があったのにもかかわらず、その90%以上が表層から 5 cm 以内に止まっていた。ただし、東北大学川内北キャンパスグラウンド土壌の深度分布の3年間の記録について比較すると、表面から深さ方向への分布の傾きが少しずつゆるやかになっていることがわかった。そこで放射性セシウムの深度分布曲線を指数関数で近似し、その放射能が半分になるまでの中央値を算出したところ、少しずつその値が大きくなっていることが系統的に見いだされた。その中央値の値は、1.2 年後で 0.8 cm、1.7年後で1.0 cm、2.2年後で 1.2cm、2.8年後で1.3cm、3.7年後で1.7cmの様になり、この傾きを計算すると1年間あたり約0.3 cm 深い方向に浸透していることがわかった。チェルノブイリ事故後の土壌中の浸透に関する報告値は 0.5-1 cm (年間)であり、若干小さめな値となった。
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