本研究では,伝統的に培われてきた日本の理科授業の優れた点を若手教員に継承するため,まず,教師用指導書・民間の理科教育研究会の報告書等から各単元の指導上のポイントや留意点に関する知見を収集した。そして,各単元で最も重要なコア知識獲得の支援に貢献するという観点から統合して,小・中学校理科の全単元を網羅する暫定版のデータベースを作成した。本来は,構築したデータベースをWeb上に公開する予定であったが,セキュリティ上の問題から断念することになり,その代りに小学校3年から中学校3年までの全理科単元の指導上のポイントや留意点を記した書籍(山下修一著『一貫した説明を引き出す理科のコミュニケーション活動』東洋館出版社)や具体的な指導上のポイントや留意を例示した書籍(山下修一編著『理科の授業研究』北樹出版)にまとめて,本研究の成果を広く共有できた。また,大学4年生対象の「教職実践演習」では,約40名を対象にして,出版した書籍を利用した授業づくりや模擬授業に取り組ませた結果,現職教員達が留意しているポイントを的確に押さえた授業づくりができるようになった。。 また,シンガポールNIEの共同研究者とも日本の理科授業を検討する機会を得て,PISAやTIMSSで高得点をあげているシンガポールの理科授業と比較しながら,各単元の指導上のポイントや留意点に関する知見を積み重ねることができた。 それらの研究成果は,国内では,日本理科教育学会・日本科学教育学会,海外では, ASERA・iSER 2014 World Conference・ISEC2014・2015 NSTAでも発表して,日本の優れた理科教育について広く紹介することができた。
|