研究課題/領域番号 |
24501042
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
松浦 執 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70238955)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Topic Maps / アバター / e-Learning / wiki / 対話システム |
研究概要 |
当該年度は、Topic Maps技術により構造化された学習資源を基盤とした学習システム“Everyday Physics on Web (EPW)”について、学習履歴や推奨情報を付与した静的リンクシステムとしての学習ポータルから、利用者とシステム(教授者)間および利用者間の対話を軸として個別に学習展開する動的システムへの転換を試みた。学習利用者の化身をアバター、システムの化身をエージェントと呼び、各知識領域なども画像化して、アバターが学習領域を拡大していく仮想世界を表現した。学習資料の推奨、学習者のコメントや教授者のアドバイスコメントをもとにした簡易対話機能を実装した。ログイン直後にアバターとエージェントの対話があり、それまでの学習の軌跡を可視化したページで学習を想起させる。さらにアバタールームとして、自己の学習成果とともに、同時期に活動する全アバターを可視化し、任意のアバターにコメントや推奨を送りインタラクションする機能を実装した。これらアバターシステムのtopic mapを考案して、システム全体を統合的に管理・開発できるようにした。またページデザインにおいては視線追尾テストを実施しつつ使いやすさの向上を図った。これらの実装とともに理科教育関連の講義での自主学習システムとして試験的実利用を行った。この結果多くの利用者が対話システムによる学習利用の方向付けが得られていた。 一方、小学校教員を主たる対象とした児童アセスメントサイト“EduNavi”、およびこれと統合した、教師の知恵を集めるwikiサイト“せんせいfolio”をTopic Mapsを基盤として開発した。これらのサイトでは子どもの人間力と学級経営上の種々の主要topicを整備し、EPWとtopic共有できる段階に到達した。これらのシステム開発は現職の小学校教員との討論および実利用を重ねて進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理科の学習を軸としながら、持続性科学、環境、産業、科学技術史、日常生活にわたる領域横断的なトピックを、その内容の関連によって結びつけ、学習や思考を広げる学習システムとすることが目的である。知識の構造化のためのシステム開発は概ね完了している。トピックの追加は継続して行っており、平成24年度は科学史、思想史、教育に関するトピック、ドリルなどの追加、制作を中心的に行った。しかし、単なるトピックの追加では個々の利用者が自ら考え、学習を展開することを促すことはできないことが分かってきた。そこで平成24年度はシステムの発想を大きく転換し、知識領域を多くの利用者が自問や対話を繰り返しつつ個々に探索していく活動を可視化することを試みた。これにより本質的な研究目的の達成により近づくことができたと評価している。 学級運営のwikiと児童アセスメントシステムの構築統合については、現場教員と定期的に議論を繰り返し、分析手法、可視化手法を検討、実装してきた。これらについては試用を繰り返して、実用できるレベルに達しつつあると評価する。 新しい手法での電子教材の開発については、立体映像の効果を活かした多視点型の立体動画教材を作成し、その作成方法について検討を進めている。教材としての自由度を優先すると、立体視による興味関心は強く喚起する一方で、視覚的な疲労や酔いの問題が出て来る。そこで、立体映像の短時間暴露手法を中心として、教材としての適正化を検討している。平成24年度は効果測定よりも手法の開発と問題抽出のための実験を中心として進めた。
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今後の研究の推進方策 |
学習ポータル“Everyday Physics on Web”については、持続性科学、環境科学、産業などの横断性の高い分野についてトピックを強化する。そして横断的学習をトリガーするための可視化要素を中心的に開発する。特に、学習者の意識に応じて学習が動的に展開されるための可視化要素を見出したい。さらに、今後は多視点型視覚化知識探索インタフェースの試作とその効果測定を重点的に実施する。 教師wikiと児童アセスメントサイトは引き続き小学校教員との議論を継続して改善する。特に本研究としては上の学習ポータルと、topic mapのレベルで統合することにより、学習ポータル上でも社会、日常、教育の問題を関連づけて学ぶことが可能になるようにする。 新しいタイプの学習教材の制作については、多視点型立体映像利用を発展させ、さらに身振り入力を活用した教材の開発を試みる。立体映像の教育利用については、短時間暴露の効果の測定とともに、部分的立体表示の方式を検討する。教室での立体映像教材の実用に関しては、教材だけでなく適正な提示手法の開発を組み合わせる必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品および物品の購入に関しては、システム開発ソフトウエアおよび分析ソフトウエアのサポート更新、立体映像などの表示機器の購入が中心となる。ICT利用教育や、立体映像など現代的メディア教材の開発に関しては近年盛んに国際会議が開かれており、これに参加するための費用は重要である。その他論文作成にあたって英文校正の費用が不可欠である。
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