研究実績の概要 |
1、昨年度に引き続き不可逆的な感温変色剤の開発を目指した。今年度は、着色剤として配位水を離脱しやすい金属錯体(紫色の八面体型六配位錯体、[Ni(H2O)2(N-N)2]X2 (N-N = N-置換エチレンジアミン; X = NO3 or ClO4))と変色剤として固体アルコールの系について検討した。開放系では、これらの錯体はN-N及びXの種類によって40~120℃で脱水し、黄~橙色に変化する。ここに低融点固体アルコールを共存させ、そのアクセプター性を利用すれば、変色温度を下げることが期待できる。すなわち、両者をシール状に密閉したとき、アルコール類は融解と同時に水分子の引き抜き剤(脱水剤)として機能するため、配位水離脱反応を促進させる効果がある。3種類の硝酸塩錯体と2種類のアルコールとの組み合わせで検討した結果、固体アルコールの融点付近では目的の変色は確認できなかった。 2、着色剤として、ヘキサメチレンテトラミンを含む錯体(MX2(hmta)2・nH2O; M=Co(III) or Ni(II), X=Br- or NO3-, n=6 or 9)についても検討した。上記1と同様に、変色剤として固体アルコールを加え、配位水離脱による変色を期待した。4種類の錯体と2種類のアルコールとの組み合わせで検討した結果、固体アルコールの融点付近での目的の変色は認められなかった。 3、教材として展開するためにシール状にする場合、水の蒸発が抑えられ、変色温度が高くなることは当初より予想されていたが、上記1及び2の結果はそれを裏付けるものとなった。今後は、よりアルコールとの親和性の高く、低融点の変色剤を選定する必要がある。
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