研究課題/領域番号 |
24501052
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
村田 隆紀 京都教育大学, その他部局等, 名誉教授 (10027675)
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研究分担者 |
笠 潤平 香川大学, 教育学部, 教授 (80452663)
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90319377)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 物理教育研究 / アクティブ・ラーニング / 高大連携 / アドバンシング物理 / 教材開発 |
研究概要 |
本研究は,高校および大学の物理教育において「科学的概念の習得」と「知識の総合的な活用」を重視した教育手法と教材を開発することを目指す。具体的には,英国「アドバンシング物理」(Aレベル物理コース)および米国「物理教育研究(PER)」におけるアクティブ・ラーニングを参考に,日本の教育現場に適応した総合的な物理教育プログラムを開発する。 今年度はこれらを詳細に検討し,開発するプログラムで採用する教材および手法の選択を行った。その結果,前者ではシミュレーションソフト「Modellus」が有効であるという結論に至った。これは,特別なプログラムの知識を必要とせず,学習者自身が学習した“そのまま”の物理表現でプログラム化でき,その結果を表やグラフ,アニメーションなど多彩な形で表現できるという特徴があり,教師と学習者の両者にとって幅広い応用が期待できるためである。 一方,後者には複数の手法があるため,各々の専門家を招聘した講演会を開催したり,海外視察やPERの第一人者である,ワシントン大学のMcdermott氏のワークショップに参加したりするなど幅広く検討した。その結果,「Interactive Lecture Demonstrations(演示実験授業)」を採用することにした。これは,ICT機器を用いた教師による演示実験とその予想や結果の考察における学習者の討論の過程を重視する手法であり,教育課程や環境が過密化した日本の高校物理現場において,最も適していると考えられるためである。 そこで,複数の高校および大学における物理授業において,これらの教材および手法の有効性を確認するために予備的な授業実践を行った結果,それぞれ一定の学習効果が確認された。一方で,前者についてはその特性上,活用の場面が限定されること,後者については,学習の核となる学習者の討論の運営方法に対する課題が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「アドバンシング物理」における教材やアクティブ・ラーニングの手法について調査した結果,それぞれ予想していた以上に,目的から手法および評価方法に至るまで多岐にわたることが明らかになった。そこで,これらの調査および検討を当初の計画より詳細に行ったところ,本研究で採用する教材および手法の決定に至るまでにかなりの時間を要した。その結果,本年度実施予定であった,高校生を対象とした公開講座を実施することができていない。しかしながら,それぞれに対する理解が深まり,次年度以降の研究の充実につながる成果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
現代的な文脈の中で,ModellusによるシミュレーションやITセンサーを用いた教師による演示実験とその予想や結果の考察における生徒の討論を中心とした,アクティブ・ラーニング物理プログラムを開発する。 具体的には,(1)アクティブ・ラーニングの教材としてModellusを使用するのに適当な分野,単元および現代的な文脈を検討する。(2)生徒間の討論を活性化するために,ファシリテータ的な役割としての教師の発問や授業運営の方法を検討するとともに,「Student Response System(クリッカー)」やタブレットPCを用いた討論支援ネットワーク(システム)などハード的な支援方法についても検討する。(3)上記に並行して,Modellusの開発者と連絡をとり、連携して日本語化を行い、教育現場において利用しやすいものにする。(4)上記(1),(2)の検討を中心に,教育現場で実践可能な授業プランを試作する。(5)試作した授業プランの効果および可能性について検討するために,研究協力者の勤務高校を中心に30名程度の高校生を募り,公開講座を開催する。講座では,ビデオやICレコーダー等による詳細な授業記録を取ったり,授業前後に概念調査や学習に対する意識調査等を実施したりするなどして,開発したプランの評価を行う。また,物理教育関係者を中心とした授業見学者を募り,事後検討会を開き,授業プランおよび改善の方向性等に対して広く意見を求める。(6)試作した授業プランを修正するとともに,他の分野,単元における授業プランを検討する。さらに,国内での研究グループとの連携を深め,討論を中心とした授業の構成や教材など次年度に向けた改良を行う。(7)研究の結果は研究会で総合的に検討して,学会発表や論文および公開ミニシンポジウムなどによって全国に発信する。また国際会議に参加して国際的な周知を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
・方策(2)に関連して,Student Response System(1クラス)やタブレットPC(10台)などのICT機器やModellusの動作やネットワークを管理するためのノートPCを購入する。 ・方策(3)に関連して,Modellusの動作および日本語化に必要なパソコンおよびプログラム関連ソフトウェアを購入する。 ・方策(5)に関連して,公開講座に必要な冊子(100部程度)の作製費用,物理教育関係者(数名)の招聘にかかる費用を支出する。また,授業記録のためのデジタルビデオをはじめとする記録器材等を購入する。 ・方策(7)に関連して,国内学会および国際会議等での研究成果の発表や情報収集のための必要経費およびシンポジウムにおける講師招聘(3名程度)のための費用を支出する。
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