研究課題/領域番号 |
24501052
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
村田 隆紀 京都教育大学, その他部局等, 名誉教授 (10027675)
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研究分担者 |
笠 潤平 香川大学, 教育学部, 教授 (80452663)
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90319377)
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キーワード | 認知科学 / アクティブ・ラーニング / 物理教育研究 / アドバンシング物理 / 高大連携 / モデリング |
研究概要 |
本研究は,米国“物理教育研究(PER)”におけるアクティブ・ラーニングおよび英国“アドバンシング物理(AP)”を参考に,日本の高校および大学の物理教育において,「科学的概念の習得」と「知識の総合的な活用」を重視した総合的な物理教育プログラムを開発することを目指すものである。昨年度までの検討の結果,APの教材であるモデリングソフト“Modellus”を用いたPERの“相互作用型演示実験授業”を開発することになった。一方で,(1)適当な分野・単元の決定,(2)教師の発問や授業運営の方法の検討および(3)Modellusの日本語化が課題となっていた。 そこで,本年度の前半は,上記(1)-(3)の検討を中心に行った。その結果,(1),(2)については,力学分野が適切であるという結論に至った。これは,高校生の主要な学習内容のひとつである運動方程式がモデリングのテーマとしても適切であり,シミュレーションの結果を実験結果と照らし合わせて確認できること,また,力学分野は典型的な誤概念が明らかであるため教師がアクティブ・ラーニング型授業の運営をしやすく,評価方法も確立しているためである。(3)については,プログラミングに詳しい外部協力者を招き, Modellusの開発者と連絡を取りながら並行して行った。 後半では,以上の成果をもとに,(4)力学分野における物理授業を開発し,京都府内の高校生(28名)対象とした,日本語化したModellusを用いた力学分野の公開講座を開催した。その結果,日本の高校物理授業において「Modellusを用いた力学分野のアクティブ・ラーニング」および「物理学の手法としてのモデリングの理解」の可能性を示唆する結果を得た。一方で,授業の定量的な評価方法や通常の物理授業に組み込む方法およびModellusの動作の安定化等の課題が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに課題となっていた,3つの課題(【研究実績】参照)を概ね解決できている。さらに,京都府内の高校生を対象とした公開講座を開催し,それをとおして開発した授業に対する日本の高校生の反応やその効果のみならず,見学した教員からの評価や意見を得ることができており,本研究目的である「科学的概念の習得」と「知識の総合的な活用」を重視した教育手法と教材の開発へ向けた次年度の見通しがついている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を総括しつつ,本研究目的である「科学的概念の習得」と「知識の総合的な活用」を重視した教育手法と教材の開発へ向けた,最終的な検討を行う。 具体的には,年度の前半では,(1)公開講座の成果と課題の報告を中心とした公開ミニシンポジウムを開催し,国内の物理教育関係者とともにModellusの高校・大学初年次物理教育における導入の可能性について検討する。その際,シミュレーション研究の専門家を招聘し,シミュレーション(モデリング)の教育利用についての基調講演を行う。 つづいて,(2)ミニシンポジウムの成果をもとに,公開講座で実践した授業展開を再検討し,通常の高校物理授業においても実践可能な展開および評価方法を検討する。ここでは,可能な限り,各高校の生徒の実態や授業の目的に応じることができるように弾力的な展開(複数のプラン)の開発を目指す。 中盤では,(3)開発した授業プランをもとに,複数の研究協力校にて授業実践し,その成果は毎月1回の研究会(高校・大学教員で構成)にて報告し合い,フィードバックしつつ,より現実的,実践的な授業プランへと改善していく。 後半では,(4)それぞれの実践結果をふまえて集約し,一連の授業プログラム(実践的な指導案集)を開発する。 終盤では,(5)開発したプログラムを学会発表や論文および公開ミニシンポジウムなどによって全国に発信する。また,可能ならば,国際会議に参加して国際的な周知を目指す。
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