研究課題/領域番号 |
24501053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
村上 忠幸 京都教育大学, 教育学部, 教授 (20314297)
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研究分担者 |
中野 英之 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80554310)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 探究学習 / 前仮説段階 / messing about / エンゲージメント / マルチプルインテリジェンス / 真正性 / コミュニケーション / 知的パフォーマンス |
研究概要 |
(1) 探究プロセスの「疑問の認識」「現象の説明」の認識を深めるため「探究の真正性」を重視した探究プロセスの概念の構築を行った。すなわち、「疑問の認識」では探究学習における仮説の設定に着目し、特に仮説に至る段階(前仮説段階)での興味・関心の発生・高まりを意図した。「現象の説明」では、科学的な認識を仮説設定および結論で知的活動として成立させた。このとき自由試行messing aboutおよびコミュニケーションを考慮した活動モデルを提案した。日本的な状況における「探究の真正性」との関係を明らかにし、日本型探究学習における真正性概念を系統的な整理を試みた。 (2) 「探究学習の真正性」と児童・生徒の変容の関係性に対する認識を深めるために有効な質の高い教材・プロセス開発を行った。すなわち、「探究学習の真正性」の具体な姿を教材および探究プロセスとして構築し(再評価も含む)、児童・生徒の変容について把握を試みた。 (3) 開発した教材・プロセスの教員養成・教員研修の場での実践を継続し、国内外でその有効性を検討するための調査・分析を行った。すなわち、(1)、(2)に基づいて教材・プロセスを組み入れた教員養成・教員研修プログラムを実践し、有効性を検討した。また、本研究に関連した教員研修に関して国内外の調査を行った。 (4) 探究学習における真正性を高めるための授業の可視化、評価の方略を検討した。すなわち、従来より、我々が開発した教材・プロセスの授業実施を協働で実施したり、小学校との連携教育で中・高の教員が探究的な授業をしたりすることより「探究における真正性」の認識やmessing about、コミュニケーションへの理解を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 探究プロセスの「疑問の認識」「現象の説明」の認識を深め「探究の真正性」を重視した探究プロセスの概念構築をするために、2012年5月より「探究学習を探究する研究会」を立ち上げ1ヶ月に1回,大学教員、現職教員、学生等の議論の場を作った。また、シンポジウム「新しい時代を切り開く理科教育のすがた」(2013年3月23日では、成果を報告し、関係する研究者と交流した。 (2)「探究学習の真正性」と児童・生徒の変容の関係性に対する認識を深めるために有効な質の高い教材・プロセスの開発を行った。すでにある10件の探究プロセスに加えて、「火おこし」「水琴窟」をテーマにしたものを開発した。これらのプロセスについて、小・中・高校等約40校で実践し有効性について調査、検討している。 (3) 開発したプロセスを活用して、教員養成・教員研修の場での実践を継続している。探究学習における開発/実践の一体化による知見が得られた。また、探究学習の状況調査では、教員研修、教員養成の場で実践を行い「探究学習の真正性」の概念形成を意図するプログラムを実践と効果が得られた。また、アメリカ、オランダで調査を実施した。アメリカでは全国認定教員の養成の経過について聞き取り調査をし、オランダではイエナプランに着目し、教員養成大学、学校等の調査、学生の研修会を企画し、その効果について調べた。 (4) 探究学習における真正性を高めるための授業の可視化、評価の方略の検討については、マルチプルインテリジェンス法に基づき児童・生徒の潜在能力を個別に評価する方法を試行的に実践した。また、真正性について、表情分析による評価について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 「探究学習の真正性」を重視した探究プロセスの概念構築するために、「探究学習を探究する研究会」を継続し、議論を深めるとともに、前仮説段階を考慮した探究プロセスの考え方のの普及を図る。また、提案性のある書籍の出版を企画している。今年度末にはシンポジウムを実施し今年度の成果を報告する機会とする。 (2)「探究学習の真正性」と児童・生徒の変容の関係性に対する認識を深めるために、効果的な質の高い教材・プロセスの開発を継続する。新たな「火おこし」「水琴窟」をテーマにしたプロセスについても実践し、プロセスとして安定化させる。これらのプロセスについて、小・中・高校等約40校で実践し「探究学習における真正性」の状況を捉えていく。 (3) 開発したプロセスを活用して、教員養成・教員研修の場での実践を継続する。探究学習における開発・実践の一体化による知見を得る。また、探究学習の状況調査では、教員研修、教員養成の場での有効性のあるプログラムを提供し、新たな実践を行う。海外調査は英国、オランダでの教員養成、調査を実施する。また、オランダではイエナプラン教育から個別教育における知見を得るために現地調査および学生等の研修の企画を継続する。 (4) 探究学習における真正性を高めるための授業の可視化、評価の方略の検討については、マルチプルインテリジェンス法の展開を拡大し、従来高校以上に適用していたものを小/中学校に展開し、評価する。また、学習の真正性について、エンゲージメントの発想を基に、表情分析による評価について独自の評価を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 「探究学習の真正性」を重視した探究プロセスの概念構築するために、前仮説段階を考慮した探究プロセスの開発のために実験機材、試薬等の消耗品費が必要である。また、本研究成果の普及を図るためのシンポジウムのための講師招聘費用が必要である。 (2)「探究学習の真正性」と児童・生徒の変容の関係性に対する認識を深めるために、独自の探究プロセスの実践に伴って、授業研究を受け入れてくれる小・中・高校への移動旅費および実験補助等の学生への謝金が必要である。 (3) 開発したプロセスを活用して、教員養成・教員研修の場での実践を継続する。プログラムの企画・実践における実験機材費用および学生等の補助に対する謝金が必要である。海外調査は英国、オランダでの教員養成、調査を実施するそれぞれの渡航費用が必要である。また、昨年同様また、オランダではイエナプラン教育の研修を企画するが、そのための通訳料等が必要である。 (4) 探究学習における真正性を高めるための授業の可視化、評価の方略の検討については、アンケート等のデータ処理に際して補助への謝金が必要となる。
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