緑葉と匍匐枝を持つSIZ-KGY株を緑葉の雄性不稔株(KMT-HD)に交配して,2つの雄性不稔遺伝子座がともにヘテロ接合の種子を得た.これを,SIZ-KGY株に掛け戻して得た種子から2雄性不稔遺伝子座がともにヘテロ接合(全体の1/4と期待される)の個体を,ここまでの過程で得た雄性不稔株(HD系統)を使用した検定により選別した.ヘテロ接合体の自殖種子は1/16の割合で2雄性不稔遺伝子のホモ接合体と期待できるので,自殖種子を順次播種,栽培した.これらからホモ接合体を選別する検定交雑を行い,2014年度には84系統954粒から,1維持系統を見出した.これをHD系統に交配して得た雄性不稔株は以前の維持系統よりも安定した形質発現を示した. 赤葉で斜行枝を持つV4株を上と同様に交配し検定した.2014年度には5系統の自殖種子を検定交雑して得た種子1722粒を栽培して,3系統から4維持系統を見出した.4維持系統には,強い匍匐性を示しHD系統に交配して得た不稔株も匍匐枝を持つものがある一方,自殖種子から斜行枝を持つ個体が出現し, HD系統と交配して得た不稔株も斜行枝となった.この作出過程で,HD系統も赤葉を持つようになった. あわせて,赤葉で匍匐枝を持つ高性のKMT-AP1系から,1維持系統を見出したが,赤葉で矮性・匍匐性のV6系からは維持系統を得られなかった.また,色彩計による葉色の判別を試みたが,葉ごとの色味の差が大きく,目視で遺伝子型の違いを分別出来ないときには,機械測定でも分別が困難であった. 本研究の目標である赤葉と緑葉の「雄性不稔維持系統」の作出という目標を達成した.特に,斜行枝を持ちコンパクトに生育する維持系統と雄性不稔系統のセットを作出することが出来たことは,教育現場での利用を考えると大きな成果であった考えている.
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