研究課題/領域番号 |
24501060
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
星野 由雅 長崎大学, 教育学部, 教授 (50219177)
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キーワード | 自然科学教育 / 教材開発 / 色素増感太陽電池 / クロロフィル / 光エネルギー学習 / 先端科学 / 授業実践 / カリキュラム |
研究概要 |
1.平成25年度は,平成24年度に明らかにした酸化チタンに短時間で吸着可能なクロロフィルcを含む褐藻類からの抽出液中のクロロフィルcの濃度を高めることを目指した。褐藻類として,平成24年度は,塩蔵の乾燥ワカメを用いていたが,平成25年度は生ワカメを一度煮沸したものを乾燥して用いた。さらに,抽出液をエタノールからメタノールに変更したところ,クロロフィルcを高濃度に含む抽出液を得られた。 2.この高濃度にクロロフィルcを含む抽出液をガラス電極に固定化した酸化チタンに数回繰り返し滴下することでクロロフィルcを吸着させ,色素増感太陽電池を作製した。この太陽電池を疑似太陽光照射下で電流電圧特性を測定したところ、開放電圧0.32 V,開放電流0.52 mA,変換効率0.03%の性能を得た。これは,本研究において吸着時間数分という極短時間で作製したクロロフィル色素増感太陽電池では最も良い性能を示した。 3.この色素増感太陽電池を3つ直列に繋いで自然太陽光照射下,疑似太陽光照射下,及び500 Wハロゲンランプ照射下で電子オルゴールの駆動を確認したところ,いずれも音階を明瞭に奏でることを確認した。しかし,白熱灯照射下では電子オルゴールの音は確認できたが,明瞭な音階を確認することはできなかった。 4.このクロロフィル色素増感太陽電池の教材としての評価を行うため,市内の高等学校2年生を対象に太陽電池の作製授業を行った。作製した太陽電池を自然太陽光照射下で電子オルゴールを駆動させたところ,ほとんどの生徒が明瞭な音階を確認するとともに,達成感を味わうことができ,クロロフィル色素増感太陽電池の教材としての有用性が明らかになった。 5.地元の漁業協同組合の協力によりクロロフィル色素増感太陽電池の原材料の一つであるワカメを養殖し、生わかめ10 kgを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.短時間の色素吸着で十分な電力を発生するクロロフィル色素増感太陽電池の開発が平成25年度の後半になったため,作製方法の講習会を1回しか行うことができなかった。 2.同じ理由によりホームページの開設と作成が遅れている。 3.クロロフィル色素増感太陽電池の原材料となるワカメは,今後研究を進めるうえで大量に必要となる。平成25年度末に地元の漁業協同組合の協力を得て,ワカメを養殖し10 kgの生ワカメを得ることができた。このワカメは,今後の研究に活用できるので,原材料確保の不安なく研究を進めることができる。この点は,先行している点と考えられるので,総合的には研究はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.変換効率を高めたクロロフィル色素増感太陽電池の教材化セットに必要となる薬品,ガラス器具類を購入し、教材化セットを開発する。 2.教材化セットを用いて研究協力者を対象に講習を実施する。そのための旅費及び講習用消耗品を購入する。 3.研究協力者の授業実践の記録とアンケート調査を実施する。記録の補助とアンケート集計処理の研究補助に補助者を雇う。 4.ホームページの開設と作成及び論文別刷り代に充てる。 5.研究成果を日本化学会等で研究発表を行うとともに色素増感太陽電池に関する情報収集を行う。そのための旅費に充てる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に研究成果の一部をホームページを開設し、公表予定であったが、研究の進捗が遅くなったためホームページの開設に至らず、ホームページに関わる次年度使用額が生じた。 平成26年度は、25年度末に得られた研究成果を含め、ホームページを開設し研究成果を公表するため、次年度使用額はその費用に充てる。
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