研究課題/領域番号 |
24501062
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
福田 亮治 大分大学, 工学部, 准教授 (70238492)
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研究分担者 |
齊藤 剛史 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (10379654)
本田 あおい 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50271119)
上見 憲弘 大分大学, 工学部, 准教授 (70280857)
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キーワード | 視覚情報の非視覚化 / 視線追跡 / 図形の類似度 / ファントムセンセーション |
研究概要 |
前年度に引き続き,情報の効果的な伝え方の研究に加えて,視覚情報の伝達手段としての図形表示システムの改善と,伝達手段になる触覚情報に関わる研究,取得情報把握のための視線追跡に関わる研究,それらを解析する解析手法に関わる研究にそれぞれ取り組んだ。 図形表示システムにおいて,初等幾何図形を対象とする機能を追加した。この場合,入力する図形の相互関係を把握する必要があるが,接触情報や図形の形状(折れ曲がりの判定などを含む)の認識を中心に研究を進めた。伝達手段については3点刺激のファントムセンセーションに関する研究を行い,触覚による伝達の新たな可能性を模索した。視線追跡については赤外線フィルタを用い,眼球および対象物の両方の画像を用いて視線(目がとらえている場所)を特定するシステムを用い,図形情報の重要度の定量化を試みた。評価手法に関しては,関数のグラフの特徴を比較するために定義域を一部に制限するための研究を行った。一部の数値データのグラフの特徴は一定の反応が見られるところに限定した解析が必要となることがあり,人間の目はそれを特徴的な形などから瞬時に特定している。これに対して,筋電位波形のF波と呼ばれる特徴的な波形の出現区間に関する研究を行った。筋電波形の解析は,視覚情報をもとに人の判断で行われる部分が多くあるが,この研究の成果はこの分野にも適応可能であると思われる。 今年度の全体の成果をまとめると,各項目に対してそれぞれ昨年度から一定の進歩があり,さらに一部では新たな方向性が生まれたと思われる。今後新たな方向性を含めた上で,個々の部品を組み合わせ発展させる方向で研究を進めるつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の目的は,(1)情報のグラフ構造の設定および有向辺の重要度の解析, (2)有効な視覚情報の非視覚的伝達方法の検討, (3)図形表示システムの使いやすさその他の評価,最適化 , (4) 評価手法の検討 , に関する研究を行うことである。前年度に引き続き,全ての項目でそれぞれ内容を改善発展させることができた。 (1)については視線情報を取得するシステムを用いて図形の重要度を評価する試みを行った。具体的には説明の付随した数学の教材としての図形を見るときの視線を解析し,図形内の特定の対象または2つの対象間の関連にどれだけ集中しているかを定量化した( ATCM2013 において発表,福田,斎藤)。 (2)については,初等幾何図形を対象とした図形入力システムを提案した。この対象は部品の構造は単純であるが,相互関係の把握が重要な意味を持ち,それらの自動認識にについて ATCM2013 において発表した(福田)。 3点のファントムセンセイションに関する研究(第23回ライフサポート学会フロンティア講演会, 上見)は (2)に関わる研究であり,グラフの定義域を特定する研究(MDAI2013 福田,本田)は,(3), (4)に関わる研究である。
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今後の研究の推進方策 |
視覚情報の伝達でポイントとなるところは,視覚から得られる情報の要素の把握と相互関係の理解に加え,雑多な情報からの重要な情報の取捨選択にあると思われる。その場合に,対応するグラフ構造は単にもとのものを単純化したものではなく,新たな構造を持つのではないかと考えるに至った。 さらにその単純化したものに対する構造は,(現状で想定している) 伝える内容にだけ依存するのではなく,伝える手段(入力, 出力)にも依存せざるを得ないと考えている。 これにより,(使いやすさという観点では自明ではあるが,その他についても)グラフ構造をはじめとするソフトウェアに関連した評価には,入出力の方法を加味した評価が必要であると思われる。 そこで,平成26年度は情報の構造にたいし伝達方法なども加味した視点で見直すことも考えていきたい。 具体的には,ソフトウェアでの入出力のベースとなる情報の構造の見直し,視点の解析におけるグラフ構造の影響の反映,触覚情報と言葉の情報との相互関係(特に同時に与えられた場合の解析)といった研究を行い,それらに適した評価手法を考えていくという方向で全体の研究を進めていきたい。 さらに,昨年度までの研究で視覚情報を把握することが目視による作業の人的負担の軽減に役立ちうるということが副産物として出てきたが,この研究は視覚からどのように情報が伝達されるかを知る上で重要な解析だと思われる。 将来的にはこれらの解析は,非視覚情報での伝達にも役立つと思われるためこの研究も並行して行いたいと考えている。
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