研究課題/領域番号 |
24501062
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
福田 亮治 大分大学, 工学部, 准教授 (70238492)
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研究分担者 |
齊藤 剛史 九州工業大学, 大学院 情報工学研究院, 准教授 (10379654)
本田 あおい 九州工業大学, 大学院 情報工学研究院, 准教授 (50271119)
上見 憲弘 大分大学, 工学部, 准教授 (70280857)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 視覚障害者支援 / 図形表示システム / 注視点推定 / ファジィ積分 |
研究実績の概要 |
平成26年度の成果を,情報入力,情報の表現,注視点の利用のそれぞれの立場から述べると,次のようになる。 情報入力の立場からは,昨年度から取り組んでいる角判定に対して,その成果(論文1)をまとめたが,その成果を踏まえて判別を与えるための評価関数の検討について,研究を進めた。対応する定量化において,ショケ積分型の評価関数を用いているが,この評価関数は,いくつかの特徴量を組み合わせて成立している。その場合に,それぞれの特徴量を正規化([0,1] 内の数値に変換)する必要があり,またこれを通して定性的な意味合いも,捕らえやすくなっている。この正規化の有効性に関する研究については論文2にまとめている。 情報の表現については,説明をいくつかの部品に展開して捕らえ表現することにより,必要に応じて情報を得ることのできる構造を実現することができた。数学における説明は図形に関係するしないにかかわらず,概念を規定する「定義」と,いくつかの概念を用いて表現される「性質」(定理や捕題など)を多く含んでいる。これらの要素にはそれぞれ決まった部品があり,その実質的な情報構造は前提知識の量によりその複雑が変化する。論文3,発表1 では必要に応じて詳細な情報に到達することのできる情報構造についての研究成果をまとめている。 注視点については,平成25年度までの成果を用いて,初等幾何図形と説明が混在している対象に対して,対応する説明に対して注視点の動きがどれだけ反映されているかについて論文4でまとめている。また,注視点そのものの評価および精度向上についても,並行して研究をすすめ(発表3),最終年度さらにそれを踏まえて研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の目的は,視覚障害者に対して図形情報と等価な情報を提供する体制を整えることにある。そのために必要な事項として次のものが考えられる。(1) 情報の入力。(2)情報の構造の把握と評価。(3)情報の重要度の評価。最終年度に向けて,これらの立場から研究が最終段階に入っている必要がある。 (1)情報入力の立場からは,主に線図形の手書き入力に対して初年度から研究を進めている。特に26年度は図形認識の中の判別処理にかかわる改良を行うことができた。これにより,入力に必要な判断を処理するための汎用的な手法が得られたことになる(2)情報の構造の把握と評価については,数学的な記述(説明)の構造を抽象的に表現することができているので,27年度にその構造に関する評価を与えることで,汎用的な改良手法を確立する準備ができている状態といえる。(3)情報の重要度の評価については,注視点の推定の改良および精度の把握を行い注視点から取得できる情報を把握することができるにいたっている。並行して行っている評価手法に関する研究において,汎用的な判別や推定の手法を開発しているので,これらを用いて重要度を推定する準備が整っている状態であるといえる。 以上,各項目について全体をまとめる方向の研究が可能な状況が整っている状態であるので,おおむね順調に研究が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である27年度は,総合的なソフトウェアの実現とその評価を中心に研究を進めていきたい。現時点で図形を数学的に説明しているものを表現する手法を,開発しているが,これを非視覚情報として伝える場合は,グラフ構造を実現することになる。その場合ひとつの節点で把握される内容(量)は,情報を受け取る人の記憶力に依存することになる。この研究では,たとえば記憶する能力が必ずしも高くない人が,システムのおかげでできることがどれだけ多いかといったことを定量的に評価することが必要と思われる。このような情報に対して,ある時点で受け取るべき内容は,そのときにどの要素が重要かといったことに強く依存すると考えられる。現時点までの研究で,晴眼者が図形情報を読んでいるときの注視点の場所や動きで,現在注目している図形や説明の要素を特定するための情報を得ることができていると考えられる。それらを特定するための評価手法は,図形入力手法時に開発したものを,必要ならば改良しながら使うことにより,注視点から,被験者がどの要素を重要と考えるかを抽出するとともに,それに応じて与える情報の構造を最適化する方向で研究を進める予定である。 注視点の動きの変化は,人の意図を反映することが予想されるところではあるが,脳波などの情報からもその変化は捉えることができると思われる。この試みは,当初の研究計画からは逸脱するところではあるが,この研究をさらに発展させるための,ひとつの方向性として試行的に研究を進めていきたいと考えている。
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