研究課題/領域番号 |
24501073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡工業大学短期大学部 |
研究代表者 |
石塚 丈晴 福岡工業大学短期大学部, 情報メディア学科, 准教授 (70293602)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 情報の科学的な理解 / 情報科学教育 / 情報教育 / 小学校 / 国際情報交換 / ドイツ:リトアニア |
研究概要 |
(1)情報科学教育の一つの方法として国際的にも定評のあるCSアンプラグドの学習活動や,欧州を中心に日本も参加して行われている国際情報科学コンテスト(ビーバーコンテスト)の出題内容を分析して,小学校での学習内容との一致についての研究を実施した.その結果,CSアンプラグドの学習内容の大部分は小学校の既存の教育課程の中で無理なく行うことができることが判明した.また,CSアンプラグドの分析を行う際に使用した手法を用いてビーバーコンテストの内容についても同様の分析を行い,H25年度には結果を報告できる予定である. (2)小学校での学習環境に準じた条件で実施された小学生向けのサイエンスイベントにおいて,CSアンプラグドの内容の2進法を扱ったテーマで,その指導プログラムについての実証実験と分析を行った.その結果,小学生を対象とする場合の推奨学年,初めてCSアンプラグドを指導する教員に必要な教材や指導上の注意点などの情報を得ることができ,H25年度での教材開発に活かすことが期待できる. (3)ビーバーコンテストの創設者が来日した際に交流する機会が得られ,ビーバーコンテストについての情報を得ることができただけでなく,ヨーロッパでの情報教育に関する参考資料や情報を得ることができた.これらの情報を整理・分析して日本における情報科学教育に活かすべく,主に文献調査による研究を行った.この研究については特に各国の研究者との情報交換などを行い,結果などを報告できるようH25年度も継続して行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)CSアンプラグドの学習活動と小学校での教育課程と整合性や学習内容と一致する学習指導要領及び教科書での単元を明らかにするという実施計画については目標を達成した.その結果,情報科学教育を小学校で行うことの可能性が明らかとなった.CSアンプラグドの学習活動と小学校での学習活動の調査で実施した分析手法と結果については,査読付論文に採録され,妥当性が認められたと考えられる.また,ビーバーコンテストや他の教材などにおける題材と小学校での教育課程との一致については,関係する資料の収集は概ねでき,大まかな分析については行うことができた. (2)小学校での情報教育における情報の科学的な理解の育成に対する学習モデルの提案については,CSアンプラグドのテーマに関しては目処がついたものの,CSアンプラグド関連だけでは不十分であるため,他の教材についても併せて検討する必要があるとの結論に至った. (3)2進法を扱ったテーマで,その指導プログラムについての実証実験については当初はH25年度の実施予定であったが,実証実験を行うことができるイベントが開催されたため,繰り上げて実施した. (4)ヨーロッパでの情報教育に関する調査研究については,当初の計画を変更して来年度に延期することを決定した.その理由は,リトアニアより来日した研究者への聴き取り調査の結果,提供された参考資料や情報の分析を本年度に集中して行い,H25年度に調査活動を行う方が,より得られるものが大きいと判断したためである.
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今後の研究の推進方策 |
全体的に当初の計画通り推進していくが,H24年度からH25年度に繰り延べた計画の実施やH25年度計画から前倒しで行った研究結果を活かしてH25年度の研究を推進する. (1)本年度採録された査読付論文で報告したCSアンプラグドの学習活動と小学校での学習活動の調査で実施した分析手法を用いて,分析対象をCSアンプラグド以外の情報科学の分野についても拡大し,情報科学教育全般に対する小学校での学習モデルの提案や,小学校での導入に関する提案を行えるように活かして本研究を推進する.特に,情報科学を教えたことがない教員に説明する際に理解しやすいように,現行の学校制度との一致点や,情報科学教育の目標,学習モデル,及び学習内容などを図表を用いて示して説明することができるようにする. (2)H25年度から本年度に一部前倒しして実施した実証実験で得られた知見,及びその結果を小学校教員に紹介した際に得ることができた意見などを基にして,初めて情報科学を教える教員でも授業を行うことができる教材及び指導パッケージの開発を進め,H25年度に計画している小学校での試験的な実践につなげていく. (3)ヨーロッパでの情報教育の推進に関する調査研究については,現地調査を行う前に,来日した研究者への聴き取り調査の際に,提供された参考資料や情報の分析を徹底して行うと共に,国際会議などの場で各国の研究者と予備調査的な議論を行い,本年度からH25年度に実施を繰り延べた調査活動の効率を高めるように活かし,調査結果の報告ができるようにする.また,これらの結果を日本の教育制度などと比較し,(1)に活かしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の残額214,893円の主たる理由は,当初予定していたドイツでの調査活動を平成25年度に計画を変更したためであり,この残額は以下の計画(2)で活用する. (1)設備備品については,ビデオカメラをH24年度に1台購入したが,実践の全体像の記録と同時に特定の部分の記録を同時に行い,分析に使用する必要性があり,実証実験の記録を行うためのビデオカメラをH25年度でもう1台購入する.また,作成した教材を提示する用途でノートパソコン(又はタブレットパソコン)及びプロジェクタを1セット購入する.その他,教材の製作時にかかる消耗品の購入として使用を計画している. (2)旅費については,H24年度に計画していたドイツでの調査活動費用に相当する繰り越しした研究費をH25年度に使用して,ドイツを中心としたヨーロッパでの情報教育の普及についての調査を行う.当初H25に計上した旅費は,主に日本国内への旅費として使用する.内訳は,小学生向け実践データの収集として3回分,連携研究者らとの打ち合わせを6回分,成果発表として2回分の使用を計画する. (3)人件費・謝金については,主に教材作成時の補助や成果報告などの情報発信のためのホームページの製作・管理のために,H24年度に引き続き,学生アルバイトの雇用を計画している.尚,当初の計画時より最低賃金の引き上げに伴い,時間単価が上昇したが,ホームページに関しては,H24年度中に大部分の製作が完了したため,雇用時間を圧縮することで当初計画通りの使用を計画する. (4)その他の経費については,H24年度の研究成果を現在査読付論文誌に投稿を行っているため,採録となった場合の掲載料への充当と,教材の製作時にかかる経費として使用を計画している.
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