研究課題/領域番号 |
24501073
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研究機関 | 福岡工業大学短期大学部 |
研究代表者 |
石塚 丈晴 福岡工業大学短期大学部, 情報メディア学科, 准教授 (70293602)
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キーワード | 情報科学教育 / 小学校 / 情報教育 / 国際情報交換 |
研究概要 |
1.H24年度の小学生向けサイエンスイベントにおいて実施されたCSアンプラグドの学習に対する,児童の学習効果に関する分析を行った.本研究の結果については,日本教育工学会,情報処理学会,国際会議で発表を行い,情報処理学会からは査読論文として投稿するよう推薦された. また,これまでに公開されているCSアンプラグドの学習内容を精査し,発展型の学習プログラムを新たに開発し,短大生,高校生を対象に試行実験を実施し,今後の小学生向けプログラム及び教材の開発について連携研究者らと議論を行った. 2.欧州を中心に日本も参加して行われている国際情報科学コンテスト(ビーバーコンテスト)の国内での出題問題の作成に参画し,また国際委員会の会合にも出席し,本コンテストの歴史や各国での実施状況,各国での情報科学教育の現状などについて,出席委員を中心に調査活動を行った.これらの調査から,情報科学教育が過去数年間で急速に普及してきた地域について検討を行い,H26年度に詳細な訪問調査を行うための参考資料とすることができた. また,H25年度に実施された問題について,出題時に想定した難易度と実際の正解率がかけ離れた問題があることがわかり,過去に出題された問題に対しての調査と原因の分析を開始した.これらの結果をH26年度の出題に活かし,情報科学に関する知識や考え方の正確な測定ができるような方法について研究を継続する. 3.CSアンプラグドの提唱者によって公開されているニュージーランドの情報科学教育に関するカリキュラムの情報を連携研究者より提供された.内容などを連携研究者らと検討したところ,更なる詳細な分析が必要であると意見が一致し,H26年度中に分析結果を出し,本研究にも活かすこととした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)CSアンプラグドの学習活動による学習効果と実施推奨学年を明らかにするため,H24年度実施の実験の分析を進め,査読論文として投稿を行ったが,査読者との議論の結果,分析結果に誤りがあることが判明した.そのため,分析を再度行い,慎重を期して事前に学会の研究会などで発表を行うなどして,査読論文の投稿準備を行ったため,当初の計画より遅れることとなった.一方で,他の教材研究及び開発などは実施しており,総合的に見てやや遅れていると判断した. (2)本務校のカリキュラム改訂があり,一時的に担当授業数が増えたが,これについては当初の研究計画には折り込み済みであった.しかし,H25年度の後半から年度末にかけて,H26年度に受審する勤務校の第三者評価のための自己点検報告書の作成等の対応に当初の予定以上に大きく時間をとられた.本研究の遂行のための時間を極力取るよう努めたものの,全体的に研究計画の達成が遅れる要因となった. (3)小学校での情報教育における情報の科学的な理解の育成に対する学習モデルの提案については,CSアンプラグド以外の教材についても検討を行うため,情報や資料の収集を進めたが,分析については(1)(2)の影響もあり,遅れていると判断した. (4)ヨーロッパでの情報教育に関する調査研究については,H25年度に調査活動を行う予定であったが,国際情報科学コンテストの国際委員会に参加した際に聞き取り調査及び資料の収集を行った.その後,聞き取り調査を実施する予定であったが,先方の都合もありH25年度の後半に実施する予定であったが(2)の影響もあり,H26年度に延期することとなった.
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今後の研究の推進方策 |
(1)H25年度の遅れにつながった大きな要因である予定外の本務校での業務については,H26年度は目処がついた.また,カリキュラム改訂の影響もH26年度には収束するため,研究活動に割く時間は当初の予定通り確保できるものと考えられる.更に,連携研究者との連携をこれまで以上に密に行うことで,H25年度の遅れを回復するようにしたいと考えている. (2)H25年度に投稿を推薦された査読論文の投稿を早期に完了し,次のステップである情報科学教育のカリキュラム提案のための研究に力を注ぎ,学会等での口頭発表などを通して,議論を深めて最終提案に結びつけていく. (3)実証実験については,いくつかの実施及び協力候補の目処が立っている.そこで,連携研究者とも協力して実施準備を入念に進めることで,できるだけ多く且つ質の高い実践研究データを収集することを目指す.これらの分析を通して,本研究で提案する情報科学教育に関する学習活動についての妥当性を明らかにする. (4)ヨーロッパでの情報科学教育の推進に関する調査研究については,本研究における現地調査に加えて,国際学会での講演などの他の機会も利用することで,日本の情報科学教育の推進に役立つ知見を得るよう情報収集を行い,分析を行う.その際に,これまでの連携研究者以外でも,専門知識(特に日本の教育課程や海外の情報教育に関する)を有する研究者とも情報交換を行うなどして,本研究の遂行を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた最も大きな原因は,H25年度後半に本務が予定外の多忙となり,予定していた海外調査をH26年度に延期したこと,及び連携研究者との研究打ち合わせの回数が当初計画より減ったことにある.また,論文投稿費用に関しても,分析のやり直しを行った結果,H25年度の支出はなかった. また,物品費については,当初購入予定であったビデオカメラを,H26年度の実践に合わせて購入することとしたことと,プロジェクタに関しては,既存の機器がH25年度中は問題なく使用できたため,購入をH26年度に変更したことが原因である. 旅費については,H25から延期した海外調査を行うことと,連携研究者が東京から仙台に移動したことによる当初計画からの増加が考えられ,適切に使用できると考えられる. 物品費に関しては,H25年度中に購入を計画していた物品をH26年度に変更したものの,実証実験によるアンケート結果を分析するための統計処理ソフトウエアを購入したため,使用額は計画を上回っている.そこで,H25年度購入予定の物品の購入に次年度使用額の旅費から一部を使用する. 論文投稿費に関しては,H25年度投稿予定の論文がH26年度投稿になったため,本年度で使用する予定である.
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