研究課題/領域番号 |
24501077
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
西澤 一 豊田工業高等専門学校, 電気・電子システム工学科, 教授 (40249800)
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研究分担者 |
吉岡 貴芳 豊田工業高等専門学校, 電気・電子システム工学科, 教授 (30270268)
丹羽 隆裕 八戸工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (50611349)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 線形代数 / 理解度 / インタラクティブ / Web学習システム |
研究実績の概要 |
1 学習システムを利用した学習活動の観察 H26年度も引き続き、2年生対象の「電気数学A」で、ベクトル方程式を導入する授業において、演示実験としてインタラクティブな空間ベクトル学習コンテンツを用いると共に、同科目の低進度学生を対象に課外におこなう進度別演習の一部として、同学習コンテンツを埋め込んだWeb学習システムを用いた学習を行わせた。この中で、学習コンテンツを用いた学生が、コンテンツ使用後の紙上演習で正答率を向上させる等の、直接的な成果を観測することはできなかった。すなわち、学習コンテンツの使用が、単独で空間ベクトルに関する理解を深めることはなく、学習コンテンツの使用有無にかかわらず、空間ベクトルの理解には、一定量の紙上演習が不可欠との認識を得た。しかしながら、インタラクティブな学習コンテンツの使用は、高い学習動機付け効果を期待できる。前述の進度別課外演習では、当該学生が解答の過程を十分に説明できている答案を作成できるまで、何度も同一の課題に挑戦させているが、コンテンツを用いた学習を経験した学生は、前年度までの学生より粘り強く演習に取り組み、途中で諦めて学習を放棄した学生が減少している。 2 学習者の主観的自己評価の調査 低進度学生に対する聞き取り調査では、インタラクティブな学習コンテンツを使用した導入教育により、図形と数式を関連付けて考えることができることを知った、暗記型解法(教科書記載の公式を丸暗記し、図形的な特長との関連も考慮せず、盲目的に数式変形する)を取らなくても、解答できそう、との発言を得ている。 3 学習活動と自己評価の分析 インタラクティブな学習コンテンツの導入により、演習、課外演習の空白答案が減少し、たとえ最終解答に至らない答案であっても、図や、文章を用いた説明が増えている。また、前述したように、進度別課外演習の放棄学生も減少している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 インタラクティブな空間ベクトル学習システムを利用した学習活動の観察 今年度も、課外紙上演習における低進度学生を中心に、学習システムを使用させ、学習活動を観察した。学習コンテンツの使用が、学習者の理解度を直接向上させるとは考えにくいが、学習者を有意味学習に導くことで、学習意欲を高めているとの知見を得た。 2 学習者の主観的自己評価の調査 低進度学生への面談調査から、学習者の主観的自己評価の変化を一部抽出できた。彼らの発言は、空白解答の減少、および、課外紙上演習放棄者の減少傾向とも符合する。すなわち、学習コンテンツの利用は、従来は主流であった暗記型解法から学習者が抜け出し、図形的な特長との関連も活用した解法スタイルに移行する契機を与えていると考えられる。 3 学習活動と自己評価の分析 教科書や黒板等2次元にならざるを得ない提示法に対し、3次元仮想空間は、現実世界との近接感が高いため、図形と数式を関連付けることが有益な概念の導入教育に適しているとの示唆を得た。インタラクティブな学習コンテンツの効果は、公式の暗記に偏りがちな学習分野において、数式を図形的特長と密接に関わらせることで、数式のしくみが学習者にも明らかになり、学習動機が高まることにある。また、現実世界に近い3次元仮想空間は、黒板や紙上では表現しにくいが、コンピュータ上で表現できれば、導入教育の現実感を高めることができる。しかしながら、3次元空間の図形を操作変形は容易でなく(慣れが必要)、初心者に適したより直感的な操作方法(インターフェイス)が必要との認識も得た。
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今後の研究の推進方策 |
1 3次元仮想空間の活用 空間ベクトル学習の導入教育として、インタラクティブな学習コンテンツは、図形的特長との関連付けから数式のしくみを明らかにし、学習者の学習動機を高める効果があった。この利点を、電気工学でより影響の大きい三角関数のグラフ学習に転用できないかを検討したい。すなわち、「電気回路」で使われる三角関数のグラフ、位相差、合成と、回転ベクトル表現を、3次元空間で統一的に表現すれば、より見通しのよい導入教育になると考える。 2 学習コンテンツ・インターフェイスの改良 学習コンテンツにおいて、仮想空間内の図形を学習者が操作する際に、初心者でも容易に操作できる、より直観的な操作法を実現すべく、3Dポジショニング・センサー(Leap Motion)の活用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、勤務校における学位授与機構の認証評価の受け入れ担当業務に集中する必要から学会発表を控えたため、旅費が、予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の国際会議における成果発表に使用する予定である。
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