研究課題/領域番号 |
24501085
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
早岡 英介 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任講師 (10538284)
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研究分担者 |
三上 直之 北海道大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00422014)
杉山 滋郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30179171)
藤吉 亮子 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70229061)
鳥羽 妙 尚絅学院大学, 生活環境学科, 講師 (70437086)
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キーワード | 科学コミュニケーション / 映像メディア / トランスサイエンス / 科学技術政策 / 科学教育 / 科学技術対話 / 市民参加 / ワークショップ |
研究概要 |
本研究は、映像メディアの特性を活かして、熟議に基づいた市民参加型の新たな科学技術対話を構築し、市民のあいだにリスクコミュニケーションの意識を高めてもらうための手法を探るのが目的である。 前年度までは、福島第一発電所における事故がもたらす甚大な影響を念頭に置き、「低線量被曝の許容」「がれきの受け入れ」「原子力発電所の再稼働」「除染をどこまで行うか」「自然エネルギーにどれくらいのコストを払うのか」といったテーマを検討してきた。だがいずれも、価値観を問うレベルにまで内容を噛み砕いていくのが困難であり、一定の技術的知識を要するタイプのテーマが多く、市民参加型の議論には適さないという結論を得た。 そこで、平成25年度は、行政を中心とした福島における食の地産地消を目指した動きと、それに対する市民の考えやリアクションについて調べるため、福島での現地調査と映像取材を、2回行った。現地では、放射能の全袋検査を行っている米農家、学校給食(小学校)の現場、福島市、いわき市などの小学生をもつ主婦、学校給食会などに取材した。 こうしたヒアリング調査によって、主婦がもつ放射線に関する漠然とした不安を明らかにした。その結果、主婦たちの不安は決して非科学的・非論理的なものではなく、その主張はリスクコミュニケーションの観点から、十分に納得できる論理性に基づくものと判明した。 逆に、飯舘村の仮設住宅で食品を販売している男性は、地産地消を進めるべきという強い意思を示し、放射線に関する科学的理解の普及を求めた。その背景には、「農業を奪われることは人生に奪われることに等しい」といった、論理だけでは説得不可能な、被害者にしか分からない視点があった。 このように、リスクコミュニケーションをめぐる状況は非常に入り組んでいて複雑である。解決を目指すよりもまず先にこうした状況を理解してもらうことが重要であるという結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書において、映像コンテンツの制作を終わらせることになっているが、まだ完成していない。ただし動画サイトの構築については、動画サーバの契約および設置(学外)と、サイトを構築するためのサーバーの設置(学内)および、ラーニングマネジメントサイト作成のためのソフトのインストール等、Webシステムの準備が順調に進んでいる。 ワークショップに関しては、様々な研究協力者を募るため、研究代表者が所属している、北海道大学・科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP・コーステップ)において2014年度選択実習として開講するなどして準備を進めている。 ワークショップの設計についてはそれぞれのエッセンスを活字と写真で表現した「活字資料」と、映像で表現した「映像資料」の2つを作成し、ワークショップを開催することによって、市民のあいだで福島の放射線と食をめぐる状況について議論してもらう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は遅れている映像制作およびワークショップの実施を、引き続き研究分担者の監修や2014年度CoSTEP受講生の協力も得ながら進めていく。 ワークショップを実施するにあたり、市民が出した結果をどのように評価するかは、慎重な検討が必要である。参加対象者は北大の学生やCoSTEP関係者だけで行うのか、それとも札幌市民をどの程度まで呼ぶか、こうした参加者の範囲を決める必要がある。また時間的な余裕があれば、福島でもワークショップを実施したいと考えている。 3年の時を経て、早くも原発の問題にはマスメディアを中心に風化の兆しが見える。今回の事故を貴重な教訓とするためにも、今こそ大学など公的機関が中心となって、適切にメディアを使いこなし、対話の場を生み出していくべきであると考える。今後も研究を進めるために一層努力していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
基金の場合、北海道大学では支払いベースで報告しており、平成26年3月に納品したものは通常平成26年4月に支払いとなるので平成26年度の報告となるため、次年度使用額が生じている。北海道大学においては基金分については支払いベースの方が早く執行額を確定できるためこのような取扱にしている。 基金の場合、北海道大学では支払いベースで報告しており、平成26年3月に納品したものは通常平成26年4月に支払いとなるので平成26年度の報告となるため、次年度使用額が生じている。北海道大学においては基金分については支払いベースの方が早く執行額を確定できるためこのような取扱にしている。
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