研究課題/領域番号 |
24501088
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
岡 正明 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50292355)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物観察 / ソフトウエア / シミュレーション / ICT教材 / 仮想体験 |
研究概要 |
研究初年度の今年度は、プラットフォームを管理するサーバの立ち上げと、そこに配置する教材群のコンテンツ拡充を行った。WindowsServer2012をOSとするサーバ(DELL PowerEdge T620)を立ち上げ、3Dディスプレイ(TRIMON 2D/3D Monitor)および3Dヘッドマウントディスプレイ(I-CINE 3D Display)を接続し、ハードウエア側を構築した。現在、Webページの作成を進めており、以下に示す教材コンテンツ群の搭載を進めている。 自主学習エリアの教材コンテンツについては、eラーニングの国際標準規格SCORM1.2・SCORM2004に準拠したLectureMAKER(KiBAN)を用いて、7つのe-ラーニング教材を作成した。一例としては、教育現場に普及しつつある「栽培した植物を材料とするものづくり」の題材として、ヒョウタンの播種から収穫までの栽培管理技術と収穫した果実の処理・装飾技術(磨き出し・墨流し・紙貼りなど)を動画を含めて紹介したeラーニング教材がある。 四次元観察エリアのコンテンツとしては、これまでにも多数作成してきた植物生長動画を拡充するとともに、植物生長に伴う形態変化を数式で再現するための複数の描画システムを試みた。その中で、植物の分枝構造を説明するL-systemと葉形のモデルを組み合わせた手法が植物観察教材として有効であることを見出し、トウモロコシ・ダイズの描画ソフトウエアを作成した。 バーチャル実験エリアでは、生育時期や栽植間隔による植物体変化を反映させた花壇設計ARシステムを作成した。また、三次元デジタイザによるモーションキャプチャを応用し、農機具使用動作アドバイザVRシステム(鎌振り動作の評価)を作成している。さらに、東日本大震災の津波被害に係る植物耐塩性実験を疑似体験するコンテンツも作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ICT植物教材プラットフォームのコンテンツ開発については、計画した4エリア(四次元観察・自主学習・バーチャル実験・空間移動観察の各エリア)それぞれについて、コンテンツ開発・作成が順調に進んでいる。特に新規性のある成果としては、(1)植物の自由な四次元観察を可能とする植物形態モデル(L-systemと葉形モデルを組み合わせた植物体描画システム)、(2)栽植間隔や生育時期による植物体形態変化を反映させた植物学分野独特のARシステム、(3)これまで開発例のほとんど無かった農機具使用時の動作解析と評価システム、などである。前述した「栽培した植物を材料とするものづくり」の一連の手法を説明するeラーニング教材も、公開例はほとんど無く、現在、現職教員の意見をいただきながら改良を行っている。これら以外でも、植物生長動画・バーチャル実験コンテンツ・ネットワークカメラの設置など、コンテンツ作成については研究計画以上の成果が得られた。 教材搭載用・公開用プラットフォームの構築については、ハードウエアとしての立ち上げは行ったものの、システム全体の運用に必要な機器能力検討に時間を要し、サーバ導入の時期が遅くなったため、公開までは至っていない。現在、プラットフォームの汎用性に配慮しながら、Webページの作成を進めており、次年度前半には部分公開できる見通しである。教材公開の点では、当初の研究計画から若干遅れてはいるものの、研究全体の進捗状況から見ると、順調に研究が進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
研究全体は、研究計画調書提出時の計画に則り順調に進んでいるので、当初の研究通りの方向性で進めていく。 研究期間2年目にあたる平成25年度は、教材コンテンツのさらなる拡充とともに、基本プラットフォームの完成と公開を行う。教材コンテンツについては、植物体生長モデル(形態変化モデル)の適用できる植物種を増やすための研究、またeラーニング教材については対象とする題材の範囲を広げるための研究、植物分野独特のAR技術の改良、栽培体験動作を対象とするVR技術の確立、仮想実験のためのシミュレーションソフトウエア(群落受光態勢の推定など)の作成、などが、主な研究課題となる。また、植物生長動画の追加取得や、リアルタイム植物観察のためのWebカメラの増設などの作業も進める。 ICT植物教材群統合プラットフォームの開発については、基本システムを早急に完成させ、まずはWebページの部分公開を行う。このようなコンテンツの場合は、使っていただく現職教員や生徒の使い勝手が非常に重要であるので、実際に利用していただいた上での使用感をもとに、システムの改良を行う。また、出力装置に付いての検討も必要で、二次元・三次元表示とではどちらが教育効果が高いか、表示は3Dディスプレイとヘッドマウントディスプレイのどちらが適当で現実的か、なども検証する。 研究最終年の平成26年度は、教育現場とのやり取りを行うQ&Aシステムの試行を含むプラットフォーム全体の改良を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、実測値を得る植物栽培実験のための種子・資材の購入に使用する他は、(1)プラットフォーム構築・コンテンツ公開のためのソフトウエア購入と、(2)システム改良(生徒及び現職教員の試行による検証)のための旅費、および(3)研究成果公開のための投稿料・旅費、などに使用する予定である。 (1)については、3DCG作成ソフトウエア、Webページを効果的に表示させるソフトウエア、その他について、最新版の購入を予定している。(2)では、本科研費対象研究の成果を社会に有効に還元するために必須の項目であるので、本学のある宮城県に限定せず、幅広い使用者に試行していただくことを考えている。(3)については、本研究の成果を客観的・学術的に評価していただくために必要なことである。また、ICT教材コンテンツの開発に取り組んでいるより広範囲の研究者に本研究を知っていただき、本研究で開発した教材群統合プラットフォームが他者の開発コンテンツを含めた教材群の集積装置となり、その中核となっていく上で重要な項目である。この意味から、本研究で得た成果を、積極的に学会講演会や学術雑誌で発表していく。
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