研究課題/領域番号 |
24501088
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
岡 正明 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50292355)
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キーワード | 植物観察 / ソフトウエア / シミュレーション / ICT教材 / 仮想体験 |
研究概要 |
ICT植物教材プラットフォームのコンテンツ開発については、前年比に引き続き、計画した4エリア(四次元観察、eラーニング教材による自主学習、バーチャル実験、空間移動の各エリア)それぞれについて、コンテンツ作成が順調に進んでいる。特に新規性の高い研究実績としては、(1)植物の自由な四次元観察を可能とするL-systemによる植物形態モデル(前年に報告)の改良と、葉や茎のテクスチャを再現したリアルな質感を有する3DCG植物体モデルの作成、(2)可変形態モデルを適用させた植物分野独特のAR表示システムの改良(生長アニメーションの表示・多数個体の同時表示・屋外花壇での実行など)、(3)前年に作成したeラーニング教材群の改良と拡充(新たに「イネの多様な教育分野における教材としての活用」コンテンツを作成)、(4)代表的農機具である鎌や鍬などの使用動作を再現した3DCGアニメーションの作成とプロジェクション・マッピングによる立体認識システムの開発、(5)東日本大震災の農業被害を実感するための教材植物耐塩性バーチャル実験システム、などがある。開発したこれらのコンテンツは、現職教員向けの公開講座、小中学校での出前授業、教育系大学での実践、などで試行し、授業後にいただくコメントを元に改良を重ねている。 教材コンテンツ搭載・公開用のプラットフォームの構築については、文字情報や画像・教材動画を公開するための基本的な構造は作成済みであるが、ネットワーク上でeラーニング教材やバーチャル実験を動作する仕組み、開発ソフトウエアをリアルタイムに操作するシステム、などに課題が残されており、多様なコンテンツを含んだ統合システムとしての公開には至っていない。しかしながら、一部を試行してもらった現場教師からは早期の公開を望む声が多く、可能な部分からネットワーク上で公開していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した多数の教材コンテンツについては、画像・動画ファイル、eラーニング教材、実行ファイルなどの形で試行・配布・部分公開しており、現職教員や学生(本学および他大学)、生徒から高い評価を得ている。この部分では、計画以上の成果を達成していると判断している。 植物教材コンテンツを搭載するICTプラットフォームについては、多様なコンテンツを統合したWebページの公開までは至っていないが、この主な理由として、試行した利用者のコメントを元に各コンテンツを改良するのに伴って、Webページの機能自体に、研究開始時に想定していたよりも高いレベルの操作性が必要になったことが挙げられる。基本的な公開ページは作成済みであり、統合プラットフォームの作成についても、おおむね順調に進んでいると考えている。 研究全体の進捗状況から考えて、“おおむね順調に進展している”と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
研究全体は、研究計画書提出時の計画に則り順調に進んでいるので、当初の方向性のままで研究を進める。 研究期間最終年にあたる平成26年度は、教材コンテンツの改良・拡充を進めるとともに、植物教材群統合プラットフォーム構築に重点を置く。公開準備の整った植物生長画像・動画・一部のeラーニング教材に加え、自作した「植物体の四次元観察システム」「バーチャル実験システム(シミュレーション実験など多数)」「(操作が比較的複雑な)eラーニング教材群」「ネットワークカメラを用いたリアルタイム映像配信」などのコンテンツ、およびシステム全体のフロント画面となる「バーチャルフィールド・システム」などを、一つのプラットフォームに搭載した統合システムを構築する。また、個々のコンテンツやソフトウエア、またプロジェクションマッピングのデータのように実行に外部機器を必要とするデータ群は、Webからダウンロードできるようにする。上記のように、早期の公開を求める現場教員からの声が多いので、準備が整ったコンテンツから順次公開している予定である。 研究課題として予定している(1)栽培教育に関するQ&Aシステム、(2)3Dヘッドマウントディスプレイ(HMD)による立体可視化、についても取り組む。(1)については残り期間1年では本格的な運用は難しいが、試行(現場教師との双方向情報交換)によりシステムの問題点抽出を中心に研究を行う。(2)については、教育現場での生徒人数分のHMD準備は難しいと思われるが、植物教育の将来像を示す技術としてデモンストレーションできる段階まで進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
教材コンテンツ開発については計画を上回る成果を得ているが、教材群統合プラットフォームの開発が、新たに見いだされた技術的課題により、公開段階に到達していない。それに連動して、投稿論文(現在執筆中)の投稿が予定より遅れ、そのための費用が次年度に繰り越された。また、予定していた研究成果発表のための海外出張が、所属機関の会議予定のため実施できなくなった。これらが、次年度使用額が生じた主な理由である。 教材群統合プラットフォームの構築のために、いくつかの市販ソフトウエアを追加購入する必要があることが判明したので、次年度、これらを購入する。また、次年度は研究期間の最終年度であるので積極的に成果発表を行う予定であり、少なくとも3報の投稿論文の他、複数回の国内学会と、次年度に繰り越しになった国外学会での研究発表を予定している。次年度に繰り越された研究費は主に成果発表の費用として、次年度研究費と合算して活用する。
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