児童・生徒から,理科は「自分のふだんの生活や社会に出て,もっとも役に立たない教科」であると思われているようである.この現状を打破するため,申請者の出前化学実験の実践で蓄積された成果(開発実験教材,実験演示法)を背景に,身の回りや身近なことがらと結びついた内容で,理科が役に立つ教科であることを実感でき,理科学習に活用できるような,非食品系,及び食品系の身近な題材をテーマに化学(科学)実験教材と指導法を開発する.開発したコンテンツで実践を行い,アンケートから実践を評価し,改善処置をすることを繰り返して実験教材と指導法を継続的に発展させ,完成させることを目的として研究を進めてきた.2014年度までに,10種類の実験教材を,ほぼ完成したが,2014年度に実践を行った「水あめ作り」については,改良して再実践する必要があった. 2014年度の実践結果を踏まえ,実験の時間配分と指導法を改良し,2015年7月に名古屋市科学館において午前,午後各2時間,計4時間の出前化学実験教室を計画,開催した.その結果,極めて良好な結果が得られ,実験指導法として確立することができた.さらに実践後に,水あめ中のマルトースの存在を確認する方法まで開発し,実験法を発展させることができた. 研究機関を通じ,これまでに開発し,実践してきた個別指導体験型の10種類の実験教材,及び,それらの指導法の最終版という研究の成果を,研究計画通り,学外の研究協力者3名と共に「理科が役に立つことを実感できる化学教材実験集II ~個別指導体験型実験~」として,実践で使用したPowerPointや指導案を含むCD付きの全107頁の実験集としてまとめ,愛知教育大学出版会から出版した.現在,この実験集を,全国立大学図書館のほか,公立図書館,実践関係者,化学教育関係者,教育現場,授業受講学生などに広く配布しているところである.
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