この研究は,義務教育段階で技術教育が実施される中学校技術・家庭,技術分野(以下,技術科)などの様々な授業実践に貢献するために,「技術的素養」の効果的な習得・定着を図る学習過程の特定・モデル化に関する理論的・実践的な検討を行うことを目的とした。すなわち,技術教育によって習得すべき資質・能力である「技術的素養」の育成を,学習過程という微視的な観点から分析・把握することにより,「技術的素養」を適切に習得・定着する授業の計画・実施・創造に関する実践的示唆を得ることをねらいとした。 (1)まず,技術科の教師用指導書に記載される授業展開案を資料として,技術的素養の育成が期待できる学習場面を検討した。その結果,『技術の進展と社会生活への影響を認識する場面』や『成果を見据えて方法・手順を工夫する場面』などの14場面を特定することができた。 (2)特定した学習場面を踏まえ,中学校技術科「Bエネルギー変換に関する技術」における9時間の授業計画を構想・試行した。その結果,構想・実践した授業によって,生徒たちの技術科の有用性への認識や,技術への興味・関心の向上に対して効果があったことが推察できた。また,安全・手順を考えた課題解決,協力・計画する態度,技術の評価や社会との関連性などの技術的素養に対する自己評価は高くなっていることがわかった。 (3)さらに,技術的素養の習得・定着を記録することを意図した学習評価システムの開発と評価を行った。授業での使用の結果,学習プロセスにおける評価や記録の促進に役立っていると考えられ,技術的素養に関わる問題解決や創造性を評価する際に有用であることが実証できた。
|