本研究は,理科教師としての生涯的な学びと成長の過程における「省察的実践力」の獲得及び向上の実態や課題などを分析・考察するとともに,より高いレベルの「省察的実践力」を開発していくための理科の教師教育のための方策について示唆を得ることを目的とし,4カ年計画で実施してきた。本年度はその最終年度である。 本年度は,「省察的実践力」に関する前年度までの研究成果や課題を踏まえつつ,現職教師を対象とした調査を引き続き実施するとともに,「省察的実践力」の獲得・形成の要因や契機などを調査・分析した。中でも本年度の研究では,教師が理科授業の実践後に行った「行為の中の省察」についての省察(reflection on reflection-in-action)に注目し,教職経験年数の異なる2人の小学校教師を対象として収集した調査データをもとに,「行為の中の省察」が展開される状況・場面・契機,省察される内容の特徴,教職経験や教材経験との関連について分析・考察を行った。 さらに,自身の過去の理科授業実践の記録映像を活用した省察の機会を持つことが,自身の授業実践力の成長やさらなる向上のための課題の確認や再認識にとって有効ではないかと前年度の研究で示唆されたことに鑑み,別の小学校教師を対象にこの方法での省察を実施し,その有効性を検討した。 最後に,本年度に実施した研究を含めた全研究期間を通した研究成果を総括した上で,「省察的実践力」の獲得や形成を含めた教師の授業力量の高度化を図るためには,省察的実践の具体を「事例」として再構成し,それを学習資料として活用することで省察的実践に関する教師の学習を支援していくことを,理科の教師教育の新たな方策として採用し,その有効性について検討していくことが,今後の重要な研究課題となることを指摘した。
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