研究課題/領域番号 |
24501103
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
南川 慶二 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70250959)
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キーワード | 高大連携 / 創成型教育 / 工学系化学教育 |
研究概要 |
工学系化学分野の学部生・大学院生への創造性教育と、高校生の理科離れ・工学離れ対策の同時実現を目的として、高・大・院グループによる化学実験を院生から学部生、学部生から高校生への指導と協同作業で効率的に実施する仕組みを構築することを目標としている。 前年度に続き高大連携出張講義で学部生のティーチングアシスタント(TA)を主体に企画した。研究室に配属された4年生と大学院生が実験テーマの提案と実施方法を設計した。過去に出張講義で連携実績のある徳島県立科学技術高校において、同高校1年生60名を対象に、主として高分子材料と環境問題に関連したテーマでの実験を行った。実験の計画は大学院生が主体に行い、学部生とのチームを組んで少人数にグループ分けした高校生への指導にあたった。 高校生へのアンケートではすべての実験テーマが前年度よりも評価が上昇した。昨年度に続いて参加したTAが多く、昨年の反省を元に充分な準備をして説明を工夫したことが改善の大きな原因である。院生から学部生への指導を事前に行い、TAの指導能力を高めることで効率的かつ効果的に化学実験出張講義を実施できることが実証された。 小中学生対象の化学展への出展も行った。学部2年生や3年生のTAを含めた学部生と大学院生のグループで効果的指導法を検討しながら実施した。出張講義を受講した生徒を含む高校の生徒グループもブースを出展した。イベント参加者のアンケート結果から、実験テーマや指導方法についての評価を自由記述欄に着目して情報を収集した。この結果は効果的な教育法を検討するための有用なデータとなった。 以上の成果は、大学教育に関する国内学会で高大連携の視点からの報告を行ったほか、実験テーマが環境教育に深く関わることから、環境教育の学会でも報告を行った。これらを総合的にまとめた報告を大学教育研究の雑誌に投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、工学系化学分野の学部生・大学院生への創造性教育と、高校生の理科離れ・工学離れ対策の同時実現を目的として、高・大・院グループによる化学実験を実施する。院生から学部生、学部生から高校生への指導と協同作業の仕組みを提案する。院生が創造性を発揮できる実験を企画して学部低学年の学生に指導し、続いて公開講座や出前授業などによって学部生から高校生への指導を計画・実施させることで、院生・学部生自身の能力を高めるとともに、初等中等教育に貢献する仕組みの構築を目指している。 本年度は、前年度に引き続き連携実績のある高校と詳細な打合せを行い、院生・学部生ティーチングアシスタント(TA)参加型高大連携講座を実施し、過去様の出張講義と比較し、効果的な連携教育の方法を検討した。また、小中学生対象の科学イベントに出展することで、実験内容や指導方法の改善を試み、一定の成果を得た。このイベントには出張講義を受講した高校生もブースを出展しており、教えることによる学びの活用を院生から学部生、高校生へという一連の流れとして実施することができた。得られた成果を大学教育に関する国内学会で2件発表し、雑誌に報告1編を投稿、受理された。 これらのことから、当初の計画をおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高大連携出張講義では、学部生の能力をさらに高めるために、前年度にTAを経験した学生によるテーマ設定や説明方法の準備を拡充させる。テーマは継続的な実験に加え、新しいテーマも含めて全体的な改良を大学院生と学部生が中心となって検討する。特に、簡単な実験装置の作成をTA自身の課題として実施し、その経験を高校への出張講義に役立てる方策を検討する。協力関係の高校を訪問し、実施内容と方法の打合せを行う。学部学生の基礎訓練実施後、TAとして高校での指導を体験させ、教育効果を検討する。 上記の出張講義のほかに、高校生を対象とした学内のイベントである体験大学講座や、小中学生を主な対象とした科学フェスティバル等で拡大実施する。その際には、経験豊富な大学院生と初めてTAとして参加する学部生で縦割りのグループを編成し、新しいテーマの立案や効果的指導法を実践する。受講者や高校教員、保護者等のアンケートをまとめ、実験テーマや指導方法などについての情報を収集し効果的な教育法を検討する。その成果を国内学会、国際会議および雑誌論文としてまとめ、公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は高校への化学実験出張講義および一般対象の科学イベント等を実施することでティーチングアシスタントとなる大学院生および学部生の教育効果を高めるプログラムを開発することを目的としており、年度の半ばに実践が修了した後は、成果の発表や次年度の実施に向けた準備のための費用として計画的に使用している。年度末に計画していた成果発表に関する費用が予定より少なかったため次年度使用額が生じたが、全体の予算のうちわずかであり、次年度に活用できると判断した。 次年度使用額は費用全体の1%以下であり、前年度と同様に、出張講義で実施する化学実験テーマの探索と高校への出張講義の実践および成果の発表のために、翌年度分と合わせて使用する。
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