研究課題/領域番号 |
24501105
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
平尾 健二 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70301348)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 技術教育 / 生物育成 / 教材開発 / 食農教育 / 中学校技術・家庭科技術分野 |
研究概要 |
1.【中学校技術科における生物育成学習の実態調査】福岡県下の全中学校373校の技術科担当教員を対象に生物育成学習に関するアンケート調査を実施した.有効回答率は38%であった.調査結果として,育成環境に恵まれない(畑等の栽培施設がない)が半数を超えていること(55%)が明らかとなった.また,これまでに経験のある栽培教材についての設問では,果菜類(夏野菜)の栽培の経験が比較的多い一方,今年度の実施では,栽培管理が容易で,市販の栽培教材としてキット化されている葉菜類が多く,時間,育成環境の制約の中で,技術科教員の苦悩が伺える結果であった.特に,生徒数の多い,都市部の大規模校において,栽培環境に恵まれないケースが多く,多数の生徒に対して,しっかりとした生物育成の授業を行うための学習教材の提案が必要であることが確認された. 2.【小学校教科書における生物育成関連学習の調査】小学校で用いられている教科書(生活科,理科)を対象に生物育成に関する内容について調査し,中学校技術科生物育成の内容との関連性,継続性を明らかにした.栽培対象となっている作物の多くが,中学校技術科の教科書にも掲載されており,既習の状況を把握し,小学校での学習を生産技術としての生物育成学習に発展させることが重要であることが確認された. 3.【フレームワーク構築のための人的ネットワークの形成】中学校技術科教員が,小学校,高等学校(農業科)の教員,ならびに食育関係者とともに集まり,情報交換を行う場づくりを目的に,「農でつながる教育ネットワーク」を立ち上げ,第1回目のセミナーを行った.現職教員等約25名が集まり,技術科生物育成の学習の実態を共通理解することができた.参加者に対して,小学校~中学校~高校~大学がお互いの課題を共有しながら,縦の連携をとることの重要性を伝えることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「中学校技術科における生物育成学習の実態調査」では,福岡県下の実態の把握を行い,その課題を抽出することができた.このことにより,今後,実際の授業実践に貢献できる教材開発のポイントと方向性を明らかにすることができた.また,「小学校教科書における生物育成関連学習の調査」では,技術科教員が知ることが重要であると考えられる小学校での既習の内容について,具体的に明らかにすることができた.さらに,小学校から高等学校までの現職教員が一堂に会して情報交換を行う場として,「農でつながる教育ネットワーク」を発足させ,第1回目のセミナーを実施し,ネットワークを軌道にのせることができた.今後はこの取り組みを発展させながら,セミナーだけではなく,Web等での情報発信と情報共有を行うフレームワーク構築の足がかりとすることができるものと考えられる. 以上の理由から,本研究は1年目の成果として,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
以下の2点に関して,研究協力者の小・中学校等の現職教員や農業ジャーナリストに協力を仰ぐ研究体制を基盤として本研究計画を遂行する。 1.小学校に対する調査と中学校教員に結果を紹介するフレームワーク作り(2年目):前年度の調査において明らかになった小学校での生物育成学習の実態を中学校生物育成との関連で「実例集(仮題)」としてまとめ,次年度に Webページで公開するための準備とする。また,発足させた「農でつながる教育ネットワーク」において小学校教員と中学校技術科教員が生物育成に関して共通認識・理解をもつための各種セミナーを開催し,相互の意見交換を深め,その課題について明らかにする。セミナーについては,具体的には小中学校において共通的・協力的に実践できる教材や取り組み例を経験豊富な講師を招いたワークショップや,現場を見ながら論議を行う見学会を企画することとする。 2.小学校からの継続性をふまえた発展的な生物育成教材の開発(1年目):前年度の準備をふまえて,新しい作物栽培の開発に着手する。特に季節(夏作物,冬作物)に応じて中学校の生物育成に相応しい作物と栽培方法を見いだすべく基礎実験を行う。また,農作業自体の教材化もテーマとし,心身の発達を考慮した農機具の活用を小型耕耘機までを含めた範囲で捉え,試行を重ねる。試行には研究協力者の大学院生・学生や中学校教員にも協力を依頼し,実施上の安全面での種々の検討が必要であると考えている。また,動物の飼育に関しては,小学校の実態を参考に教材化の検討を開始する。地元に根ざした教材づくりについても,さらに情報を増やしつつ,前年度の探索調査の結果をもとに,実践可能な教材化を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度実施予定であった,農機具を用いた農作業の活用に関する教材化の試行については,実施が出来なかったために,耕耘機の購入に至らず,繰越金が生じている.このため,次年度は購入を行い,教材化にむけた取り組みを速やかに実施したい.また,それ以外では,農具や関連書籍の購入等で,物品費で65万円程度を使用予定である.旅費としては,代表者や研究協力者の各種関連学会での成果発表や,県外への教材開発のための事例調査等に対し,25万円程度を使用予定である.謝金には,専門知識の提供,作業補助に30万円の使用を予定している.さらに,その他として,研究成果の投稿料,Webページの制作費として,25万円の使用を予定している.
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