研究課題/領域番号 |
24501106
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山本 智一 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (70584572)
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キーワード | 科学教育 / 論証スキル |
研究概要 |
平成25年度は,科学的な論証スキルを育成するカリキュラムを開発する実践段階として,前年度に実施した3つのフェーズに加え,さらに次の第4から第6の3つのフェーズによって研究を行った。 第4フェーズとして,前年度のカリキュラム試案の評価・改善を行うとともに,A,B領域の新たな単元での教材開発を行った。前年度に集積したビデオ記録,学習履歴等の収集データを多角的に分析し,カリキュラム試案の評価結果から,問題点を抽出した。さらにこれと並行して,国内外の新たな研究動向を調査するとともに,各地の小・中・高等学校の公開研究会,自然史博物館,科学博物館や理科・科学教育の学会において,研究協力者と連携しながら,当該単元で活用する知識・情報リソースを調査・収集し,教材の修正を行った。また,小学校の教員志望の学生を対象とした大学授業において,小学校児童への科学的な論証指導を視野に入れた教材開発や評価方法開発を試行的に行った。 第5フェーズでは,改善版カリキュラムの予備的調査として附属小学校の理科授業に短期的に導入し,カリキュラムの改善部分についての評価を行った。ここでは附属小学校の第5学年理科「ものの溶け方」の授業に導入した改善版カリキュラムについて,授業場面の記録ビデオ等を分析し,改善に向けての補足的な知識・情報リソースを収集した。 第6フェーズでは改善版カリキュラムを発展的に導入した実践授業を実施する。実践授業は小学校第6学年理科にいて、A領域「水溶液の性質」,B領域「植物の養分と水の通り道(光合成)」において,研究協力者が実施し,画像・映像記録のほか,学習履歴データ等を蓄積した。 これらの取り組みの成果として,改善版カリキュラムの予備的調査に関して,「科学教育研究」に学術論文を投稿し,採録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小学生を対象とした科学的な論証スキルを育成するカリキュラム開発について,次の3点からおおむね順調であると判断した。 第1に,情報収集の面からは,授業を行う研究協力者とともに,国内外の学会に新たな研究動向を調査することができた。また,各地の小・中・高等学校の公開研究会に参加したり,自然史博物館,科学博物館を見学したりして,論証スキル育成に適した教材開発や指導方法についての知見を得ることができた。 第2に,小学生に論証スキルを育成するカリキュラムについて,小学校5年生の「ものの溶け方」の単元で,カリキュラムの試行を行うことができ,次年度への向けて,カリキュラムの改善や発展の課題を見出すことができた。 第3に,小学生による科学的な論証の生成事例について,実践研究から得られた知見を,日本科学教育学会『科学教育研究』に学術論文として公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,科学的な論証スキルを育成するカリキュラムを開発する総括段階として,最後のフェーズにおいて研究のまとめと成果の公表を行う。 最終フェーズ(第7フェーズ)では,蓄積した授業場面の記録ビデオ,ワークシート等を分析し,実践授業を評価するとともに,研究の総括的考察を行う。実践授業の結果を統合して考察を行うとともに,研究報告書を作成する。報告書の作成にあたっては,研究協力者との打ち合わせを行うとともに,理科を中心として生活科,総合的な学習の時間にまで範囲を広げ,国内外の最新の研究や科学教育プログラムによる知見を参照する。そのために,各地の小・中・高等学校の公開研究会や日本理科教育学会(熊本・愛媛)等に参加したり,自然史博物館,科学博物館を見学したりする。 研究成果については,日本科学教育学会年会(埼玉)等において,カリキュラムの総括的評価を公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として,タブレット端末を計上していたが,平成25年度の研究においてはノートパソコン等で代用可能であり,購入を見送った。また,旅費において国立科学博物館及び熊本博物館への情報収集を予定していたが,前者については授業の休講措置の都合がつかず,後者については博物館の改修工事による長期休館のため,平成26年度に延期せざるを得なかった。主に以上の理由によって,320,618円の差額が生じた。 消耗品としては,教材研究を行うために,実験器具類,関係図書を購入予定である。また,研究を総括するためのメディア,ファイル類,コンテナ等の整理用品,研究成果書類や報告書を印刷するカラーレーザープリンタが必要である。計580,618円を予定している。国内旅費関連では,資料収集において,宮崎大学~神戸大学に年間2回,国立科学博物館や申請者が勤務する九州及び研究協力者が授業実践を行う近畿の自然史・科学博物館に年間3回程度,日本理科教育学会九州支部大会(熊本),同学会全国大会(愛媛)での情報収集を予定している。さらに研究打ち合わせとして,宮崎大学~神戸大学に年間3回を計画している。また,日本科学教育学会年会(埼玉)における成果発表旅費を予定している。これらを含め,計690,000円を計上する。その他としては,翻訳,学会参加登録費及び成果物の印刷費などとして50,000円の使用を予定している。
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