研究課題/領域番号 |
24501107
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕司 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (80254457)
|
研究分担者 |
半田 久美子 兵庫県立人と自然の博物館, 兵庫県立人と自然の博物館, 主任研究員 (20311483)
池田 忠広 兵庫県立人と自然の博物館, 兵庫県立人と自然の博物館, 研究員 (50508455)
三枝 春生 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (70254456)
古谷 裕 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (90173541)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 自然史 / リテラシー / 恐竜化石 / 生涯学習 / 環境教育 |
研究概要 |
本研究は、兵庫県立人と自然の博物館(以下、「博物館」)が実施する恐竜化石の発掘調査を基軸とした生涯学習プログラムと地域づくり支援について、その効果を検証し、兵庫発の自然史の知見を持続可能な地域づくりをめざす環境教育へと発展させることを目的とする。 2006年8月の恐竜化石発見以降、博物館が実施してきた篠山層群における恐竜化石等の発掘調査と、それを活用した教育普及の取り組みを検証するために、平成24年度において外部委員からなる評価委員会を2回にわたって(2012/6/23、第1回;8/27、第2回)開催した。その内容は報告書にまとめ、博物館のホームページで公表した(http://hitohaku.jp/top/pdf/kensyouiinkai_report.pdf)。また、篠山層群産出の恐竜化石等に関連した研究成果の紹介と、その活用について市民とともに考えることを目的に、国際シンポジウム「白亜紀前期の恐竜研究最前線」(2013/3/16)とフォーラム「恐竜化石を活かした地域づくりフォーラム」およびサイエンス・カフェ「篠山層群の化石から白亜紀の生き物を復元する」(2013/3/17)を開催した。 一方、自然史リテラシー涵養のための新しい学習手法の開発に向けて、アメリカ・フィールドミュージアムや神奈川県立生命の星・地球博物館などにおいて、学習プログラムや展示手法に関する事例調査を行った。また、今後の学習プログラム開発で活用する恐竜の歯化石の3Dスキャンニングを行い、拡大レプリカ製作の準備を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度において、恐竜化石発掘に関する学術面での成果の検証と、博物館でこれまでに実施された恐竜化石を活用した学習プログラムの集約と評価、および無関心層への動機づけとなる手法開発に取り組んだ。学術面の成果の検証については、外部委員による検証委員会と国際シンポジウムを開催することにより、その目的を達成した。 一方、博物館では、これまでに恐竜化石の発掘調査を基軸とした展示や学習プログラムが実施されてきた。恐竜化石が産出している国内外の地域においてもさまざまな学習プログラムが実施されているため、アメリカ・フィールドミュージアム等の事例を調査した。また、サイエンス・カフェ「篠山層群の化石から白亜紀の生き物を復元する」を開催し、これまで発掘を基軸としてきた展示や学習プログラムを、恐竜復元を基軸とした内容へと展開させる道筋をつけることができた。さらに、「地域づくりフォーラム」を開催し、市民、環境プランナーや恐竜復元に携わる造形作家などから、恐竜化石や自然史を地域づくりに活かす方策について議論した。サイエンス・カフェやフォーラムでの意見を参考に、次年度は恐竜等の復元画を活用し、自然史への関心を高める学習プログラム開発と試行に取り組む。その試行のために、タブレット型のPCを購入した。 篠山層群の恐竜発掘調査では、これまでに多くの恐竜の歯化石が発見されている。丹波竜(竜脚類)、鳥脚類、曲竜類といった植物食恐竜の歯化石、および原始的なティラノサウルス類を含む肉食恐竜の歯化石が産出している。次年度以降にこれらの拡大レプリカを用いた新たな学習プログラム開発に着手するため、恐竜の歯化石の3次元スキャンニングを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果をもとに、平成25年度は以下の2項目について重点的に取り組む。 (1)恐竜復元をテーマに自然史に無関心な市民層への動機づけとなる手法の開発 (2)自然史教育および環境教育の先進事例調査 恐竜復元を自然史リテラシー涵養の動機づけとするために、恐竜の歯化石の拡大レプリカの製作など具体的な教材開発を実行に移す。拡大レプリカについては、前年度で得たCADデータをもとにソリッドモデルを完成させ、それをもとにレプリカを製作する。レプリカ製作は専門の業者に委託する。レプリカを活用した学習プログラムの開発に着手する。これと並行して、恐竜等の復元画を活用し、自然史への関心を高める学習プログラムの開発と試行に取り組む。学習プログラムの開発は学術・教材開発担当と学習プログラム開発担当とが協働で、市民、行政および教育関係者、恐竜復元に携わるプロの造形作家などと連携しながら進める。一方、自然史教育と環境教育との間に横たわるギャップを埋めるべく、それぞれの教育面で先進的な取り組みを行っている博物館や地方自治体を調査する。先進事例のノウハウを取り入れ、自然史の知見を環境教育へと発展させるための方法論の構築をめざす。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今後の推進方策で述べたように、平成25年度は次の2項目について重点的に取り組む。 (1)恐竜復元をテーマに自然史に無関心な市民層への動機づけとなる手法の開発 (2)自然史教育および環境教育の先進事例調査 以上のことを遂行するために、恐竜の歯化石の拡大レプリカの製作など具体的な教材開発を実行に移す。その教材製作費や、学習プログラムの試行に際して必要な物品購入および協力者への謝金等に研究費を使用する。また、自然史教育または環境教育面で先進的な取り組みを行っている博物館や地方自治体の調査のために研究費を使用する。 このほか、研究推進に必要な物品類の購入、資料整理等の補助に係る謝金などに研究費を使用する予定である。
|