【当該研究の意義および重要性】 本研究では,かつて生活や生産様式に関わる水資源が制約されてきた沖永良部島を対象に,水資源の保全やESDの手法を用いた地域づくりについて地域住民と一体となって行う事に独創性を見いだせる。また,島嶼部の水と人の生活の関わりについて再検討することは,地域に根ざしたESD展開と「仕組み」づくりの可能性を探る上で基礎的な研究になると考えた。さらには,日々の暮らしにおいて,水利用が変化したことで,遠のいてしまった水とのふれ合い方を見直し,身近な水辺空間について考える機会となる。 【研究成果】 1)沖永良部島内の町誌や字誌などに記録されている130ヶ所の湧水・暗川のうち,90ヶ所の状況について実態を把握することができた。管理は現在も各地区(字)が基本であり,中心的な湧水地については,農業水利施設とし,保全整備を進めるところも見られるようになった。しかし,利用がほとんど無い湧水地では住民の意識が低くなっていること,住民の高齢化によってかつての状態のまま放置されている場所もみられる。 2)湧水地における水利用の地域的・歴史的経緯については,段階的に整理することができた。湧水地の直接的な利用は減ってきているものの,沖永良部島における持続的な水利用を考えるのであれば,改めて島の水循環,湧水のあり方を住民自らが再認識していく必要がある。 3)知名町立下平川小学校,和泊町立大城小学校,和泊小学校において試験的な取組ではあるが,湧水地を活用したESD実践を行う事ができた。児童には身近な場所にある湧水地について現地調査,発表を行ってもらったことで,湧水地に対する意識が高まるとともに,湧水地について世代を超えた情報交換ができるようになった。ESD実践を継続的に行うための教員用資料を検討しつつ,湧水地に対して地域住民の意識を喚起させるような形で活動を展開していくことが課題である。
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