研究課題/領域番号 |
24501110
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
難波 美帆 北海道大学, 創成研究機構, 特任准教授 (80422020)
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研究分担者 |
林 衛 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (60432118)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 科学教育 / 科学コミュニケーション / 科学リテラシー / リスクコミュニケーション / メディアリテラシー |
研究概要 |
当該年度は、福島第一原子力発電所事故に際して発信された情報について、国、専門家・科学者がどのような情報をどのようなメディアから発信したか、情報伝達の様式、プロセスの検証を行った。 事故後に行われた科学コミュニケーションの中でも、政府が1年かけて実施した「国民的議論」について重点的にプロセスを明らかにした。内閣府は、様々な媒体を使った広報を実施したが、告知から実施までの期間が短すぎたり、国民同士が議論する仕掛けが乏しかったり,「ネットの訴求力は思ったより低」かったり、国民の議論への参加の機会は十分なものとはならなかった。「国民的」と言った時に、より多くの国民の参加を促すために検討しなければならない課題があきらかになった。これらの成果は、河北新報社、「シノドス」などの媒体で広く国民に伝えた。 予定していた調査1のうち、マスメディアへの取材は共同研究者の林氏が行い、これらの成果は、STS学会の年次大会でそれぞれ発表した。 事故後、科学者がどのような情報発信を行ったかについては、事故の判断で顕著な情報発信を行った早野龍五(東京大学教授)に詳細なインタビューを行った。早野教授は、情報発信にとどまらず、給食の陰膳調査、地域住民の被曝調査等をサポートしている。科学者の科学コミュニケーションはインターネット等での情報発信にとどまらず、社会活動に及んでいる。 海外事例については、ヨーロッパの科学コミュニケーションの学会ESOFに参加し、ヨーロッパのサイエンスライターと情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、新生児の研究実施計画に沿って進展している。 原発事故に係る緊急時の科学情報発信と言っても広範に及び、緊急時をどう捉えるかという問題もあるが、全国で原子力発電所が未だ稼働できずに止まっており、福島第一原発は汚染水漏れなど、完全に事故処理が終わったわけではなく、政権交代に伴い今後のエネルギー政策が不透明な状態は、引き続き、事故後の緊急時と言える。 この中で、どのように国民が必要な科学情報を発信し、科学コミュニケーションがなされるべきかが本研究のテーマであるが、初年度はこれまでの関心事例のピンポイントのヒアリングや調査を行った。これにより、どういった点に困難があるのかが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの研究成果を欧州社会学会で発表する予定である。 次年度は、受信者側の情報ニーズからの検証を行う。チェルノブイリ事故やハリケーンによる洪水等、人々が批難を伴うような緊急事態に直面した時のリスクコミュニケーションの先行研究を元に、人々の情報ニーズと情報への信頼の礎になるのが何かを探る。 ネットメディアの活用については、昨年新たな情報学会がいくつか開催されているが、参加が叶わなかったので、今後、文書として発表されるものを中心に参照していく。 昨年度実施したナノテクノロジーを題材としたリスクコミュニケーションのためのワークショップから得られたデータの整理・分析を行い、そこから得られるものをWebで発表し、フィードバックを得たいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、共同研究者との打ち合わせに予想より費用がかからなかったこと、またデータの分析等に人件費を使用しなかったので予定より支出が少なかった。次年度は、研究代表者の勤務先が変わり、当初より学会や取材、打ち合わせ参加にかかる旅費が大幅に増えることがみこまれるため、これをあて、予定通りの研究成果を得たいと考えている。 また、今年度、予算執行に余裕があれが、質的研究に資する新しい解析ソフト等を導入し、人々のニーズ調査等に、より精度の高い成果を得られるようにしたい。
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