研究課題/領域番号 |
24501119
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
瀬戸 悟 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50216545)
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キーワード | ものづくり教育 / 環境教育 / 有機薄膜太陽電池 / 電子デバイス / PBL実験 |
研究概要 |
本申請課題では高専教育の特長である「ものづくり教育」をベースに「環境教育」を融合させた電子デバイス系の新しい実験教材を開発し、25年度において電気工学科4年生後期の創造工学実験の中で実施した。具体的にはITOガラス基板上にPEDOT:PSSをスピンコートし、その上に銅二ロシアニンとフラーレンをそれぞれ数十ナノメール真空蒸着法で積層する。最後に陰極としてアルミニウムを蒸着させて有機薄膜太陽電池を完成させる「ものづくり実験」を実施した。 従来、電気工学科で行う学生実験は電子回路や電力・制御の関する課題が多く、多様な興味を有する学生に対応できないでいた。特に電子デバイス系材料実験に関しては実験を通して学ぶ機会がほとんどなかった現状があった。本申請課題ではこの点を大きく改善するために太陽電池作製実験を導入した。デバイス作製実験に必要となる基板の超音波有機洗浄、スピンコート、真空蒸着等の材料特有の実験は本実験が初め経験する実験スキルである。実験では最初はそれらの実験方法の習得のために数週間を費やし、その後グループに分かれて有機薄膜の膜厚を変化させた有機薄膜太陽電池を3セル以上作製させた。さらに作製したセルは電流・電圧特性と変換効率の評価を行った。学生は実際に自分たちが作製した太陽電池が実際に動作することを確認すると非常に感激していた。また授業で学ぶ、最先端技術と思われた有機薄膜太陽電池が思いのほか簡単に作製でき、その構造と原理が実感を伴って理解できたようである。次年度はさらに継続して本実験を実施し、学生による本実験課題に関するアンケートを実施していく。環境教育の視点についてもは省エネルギーの観点から学生には太陽電池技術の現状とエネルギー需要全体における太陽電池発電の位置づけに関して調べさせ、レポートとして報告させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題では高専教育の特長である「ものづくり教育」をベースに「環境教育」を融合させた電子デバイス系の新しい実験教材である有機薄膜太陽電池の作製実験の実施内容を平成24年度に検討したが、平成25年度においては本校電気工学科の4年生の学生実験(創造工学実験)の中で実際に実施することができた。具体的な実験では、最初に有機薄膜太陽電池の作製に必要となる実験方法の習得させる段階とグループ毎に実際に有機薄膜太陽電池を作製する段階とからなる。実験内容に関しては実際に太陽電池として働くセルの作製まで実施することができたが、まだその変換効率が低い状態である。また時々、太陽電池セルとして動作しない場合もあった。しかしながら本実験においてはこのような失敗も重要な経験と考えて、学生には何故作製した太陽電池セルがうまく動作しなかったか、その理由もレポートとして報告させて学生が自ら考える力を養うように工夫した。 一方、環境教育に関しては太陽電池に関する技術動向を調べる少し抽象的なレポート課題を途中で一度だけ課したが、もう少し具体的に課題、たとえば太陽電池の種類とその構造および変換効率の現状について調べさせれば、学生も報告しやすかったのではないかと感じた。また太陽電池の原理に関しても実験の進行に関連する講義の進行度が追いついていないので、このような場合は実験の中で太陽電池に関する簡単に説明する必要も感じたので平成26年度の改善点としたい。 また平成25年度に実験を実施した学生に対してはアンケートを取って電子デバイス実験への興味関心の変化があったかどうかを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本申請課題では高専教育の特長である「ものづくり教育」をベースに「環境教育」を融合させた電子デバイス系の新しい実験教材である有機薄膜太陽電池の作製実験の実施内容を平成24年度に検討したが、平成25年度において本校電気工学科の4年生の学生実験(創造工学実験)の中で検討した実験を実際に実施することができた。ただし、太陽電池の原理に関しては実験が少し進んだ段階で初めて講義(申請者が担当する半導体デバイスの授業)の中で習うことになり、授業の教える内容の順番について少し変更を加えていく予定である。 実験の内容に関しても平成25年度は真空蒸着法をベースとした作製方法で有機薄膜太陽電池を作製したが、別の構造の薄膜太陽電池で実験を行うことも検討していく予定である。具体的には無機のZnOナノ粒子と有機材料を用いた有機・無機ハイブリット太陽電池の構造による実験の実施を検討し、学生に作製するデバイス構造を選択できるようにする。また環境教育のために実験進行中に全電力需要における太陽電池の位置づけと現在の太陽電池の技術動向の具体例について自ら調べて報告させる取組みも引き続き実施していく。 年度後半では他高専における太陽電池作製実験の取組みを調べて参考にするとともに本校の取組みを紹介するために学会や研究会で発表していく。さらにいくつかの高専共同で太陽電池作製実験の教育効果について検証し、実験内容の改善を共同研究していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末3月に相模原市で開催された応用物理学会に全日程出席する予定であったが、学内業務と重なり本来4日間ある学会を短縮して参加したためである。 次年度は最終年度としてその成果を学会及び関連国際会議において積極的に発表する。特に国立高専機構、豊橋・長岡技大およびシンガポールのポリテク5校が主催する"The 8th International Symposium on Advances in Technology Education"において発表する予定である。
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