研究課題/領域番号 |
24501126
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
坂尻 正次 筑波技術大学, 保健科学部, 准教授 (70412963)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 盲ろう / 触覚ディスプレイ / 触覚フィードバック / 音声ピッチ / 歌唱 / 聴覚障害 |
研究概要 |
これまで研究代表者は、盲ろう者・聴覚障害者の歌唱支援を目的として触覚フィードバックによる音声ピッチ呈示システムを開発し、その有効性を確認してきた。これらの従来研究により本システムの有効性は確認されたが、本システムの訓練方法の策定という課題が残されている。本研究課題では、本システムを用いた訓練方法の確立と触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序の解明を目的としている。 平成24年度の研究実績は、次のようになる。まず初めに、本システムの訓練方法策定の一環として新たな課題曲による評価実験を実施した。具体的には、従来から課題曲として用いていた「かえるの歌」に加えて、童謡の「チューリップ」を課題曲として実際の訓練を模擬した評価実験をおこなった。被験者は盲ろう者2名であった。評価実験の結果、音程の正確性の指標としているピッチ差(目標音程と発声音程の差の絶対値)の平均が、かえるの歌では110.9 [cent]、チューリップでは109.9 [cent]とほぼ同じ値を示した。従来研究におけるピッチ差が117.5 [cent]であったが、この従来研究の結果と本研究課題の結果がほぼ同様の結果となった。 次に、触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序に関する課題では次のような評価実験を実施した。被験者は健聴者とし、ノイズによりマスキングした場合(触覚フィードバックなし)とマスキングなし(触覚フィードバックあり)の場合とでピッチ調節能力を評価した。触覚フィードバックなしの場合、訓練を繰り返すことによりピッチ差の値が著しく減少するということがわかった。これは1回目の触覚フィードバックによる訓練により固有感覚フィードバックによるピッチ制御能力が一時的に強化されたことによるものと考えられる.本研究の音声ピッチ制御の機序の一つとして固有感覚が大きな役割を果たしていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、本システムを用いた訓練方法の確立と触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序の解明を目的としている。 平成24年度の研究では、まず初めに、本システムの訓練方法策定の一環として新たな課題曲による評価実験を実施した。次に、触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序に関する課題のための評価実験を実施した。その結果、新たな課題曲の訓練効果と従来の課題曲のそれとが同様の結果を示していた。また、2つの課題曲のメロディの違いによるピッチ差の変化等の特徴は観察されなかった。この結果から、従来研究による訓練方法が他の課題曲においても同様の結果が得られることが分かった。次に、ノイズによりマスキングした場合(触覚フィードバックなし)とマスキングなし(触覚フィードバックあり)の場合とでピッチ調節能力を評価した結果、本研究の音声ピッチ制御の機序の一つとして固有感覚が大きな役割を果たしていることがわかった。 これらの実績から、本研究課題の初年度の実績として概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次のようになる。本システムを用いた訓練方法の確立という課題においては、ピッチ差や固有感覚等の効果を指標として、さらに評価実験をおこない、その結果から訓練方法の確立をおこなう。触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序についても、触覚ディスプレイの分解能と音声ピッチ制御の正確性の関連等を調べることにより、固有感覚以外の音声ピッチ制御に及ぼす影響・要因を探求していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年3月に計画していた評価実験が被験者との日程調整等が付かなかったため、次年度使用額として75,308円が生じた。計画していた評価実験は25年7月頃に実施する予定であり、その際に次年度使用額の75,308円を被験者謝金等の費用として充当する計画である。さらに、25年度においては新たな触覚ディスプレイによる音声ピッチ呈示システムを具備し、そのシステムによる評価実験をおこない、触覚フィードバックや固有感覚フィードバックが音声ピッチ制御に及ぼす影響を調べていく。
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