研究課題/領域番号 |
24501126
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
坂尻 正次 筑波技術大学, 保健科学部, 准教授 (70412963)
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キーワード | 盲ろう / 触覚ディスプレイ / 触覚フィードバック / 音声ピッチ / 歌唱 / 聴覚障害 |
研究概要 |
これまで研究代表者は、盲ろう者・聴覚障害者の歌唱支援を目的として触覚フィードバックによる音声ピッチ呈示システムを開発し、その有効性を確認してきた。これらの従来研究により本システムの有効性は確認されたが、本システムの訓練方法の策定という課題が残されている。本研究課題では、本システムを用いた訓練方法の確立と触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序の解明を目的としている。 平成25年度の研究実績は、次のようになる。従来研究では、盲ろう者を被験者に童謡の「かえるの歌」等を課題曲として、音声ピッチ呈示システムの評価をおこなってきたが、平成25年度においては、健聴者6名を被験者として評価をおこなった。課題曲を「かえるの歌」に設定し、被験者の聴覚にノイズを与え、疑似的に聴覚障害の状態にして実験をおこなった。実験に際しては、固有感覚フィードバックのみの音声ピッチ制御を観察するために1.ノイズ付加のみの条件と、本システムの音声ピッチ制御を評価するために、2.ノイズを付加しつつ音声ピッチの触覚フィードバックがある状態で実験をおこなった。その結果、目標音程と歌唱音程の差と定義したピッチ差が、1の条件では405.6 [cent]、2の条件では57.5 [cent]であった。また、1の条件では、基準の音声ピッチが定まれば、かなり正確に音声ピッチ制御が可能と考えられる被験者が少なくなかった。この事実により、健聴者における固有感覚フィードバックが作用して、喉頭筋群の制御と音声ピッチの変化との対応がある程度とれていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究では、健聴の被験者の聴覚にノイズを与え、疑似的に聴覚障害の状態にして実験をおこなった。その結果、音声ピッチの基準が確認できれば、健聴者における固有感覚フィードバックが作用して、喉頭筋群の制御と音声ピッチの変化との対応がある程度とれていることがわかり、触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序の一端が明らかになった。また、この結果から固有感覚フィードバック強化のための訓練は重要であると言える。これらの実績から、平成25年度の実績として概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次のようになる。最終年度の平成26年度においては、24,25年度の研究実績を補足するような実験課題を遂行し、本システムを用いた訓練方法の確立と触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序の解明をおこなうこととする。具体的には、触覚ディスプレイに呈示する音声ピッチの解像度を変更するなどの実験条件変更により、音声ピッチ制御の成績がどのように変化するかを評価する。それらの結果をまとめ、本システムを用いた訓練方法の指針を示し、触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の機序を示す計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議発表論文投稿のための英文校正が、実験データ等の見直しのために平成26年度に延期されたため、その費用が次年度使用額となった。 平成26年4月に英文校正を実施する予定であり、次年度使用額をその費用に充てる予定である。
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