研究課題/領域番号 |
24501132
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
助川 たかね 岡山県立大学, デザイン学部, 教授 (10440421)
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研究分担者 |
松島 史朗 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40422810)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 米国 / 韓国・シンガポール / 教育改革 / ケース / 高度職業専門人材 / デザイン / マネジメント |
研究概要 |
研究計画書で実施予定だった海外研究機関およびケース対象地区での調査を、当該年度(アジア)と翌年度(米国)の計画を入れ替えて、まずは米国ハーバード大学・コロンビア大学の経営大学院・デザイン大学院等を中心とした専門職大学院においてケース開発・活用の研究調査を実施した。その理由として、対象地区であった米国東部のハイライン地区の開発の進捗が速く、また周辺地区への経済効果も目覚しいため、25年度からでは、時期的に遅いと判断し米国を優先させたためである。同時に調査の過程で、同じく東部のネイビーヤード地区にも着目し、ケース対象とした。 本研究は人や環境に関わる建築・都市・ランドスケープなどの分野において、高度化・複雑化するデザインをマネジメントできる高度職業専門人材育成が大学教育に求められている実情を背景に、総合的視野と高度な知識・技術,創造性を併せ持った人材育成に効果の高いケース教材の開発を主たる目的としている。その際に、ケース教材として取り上げる事例の選定は、その教材の質を左右する重要な要因である。今回、早い段階で、上記2つの対象プロジェクトを選定できたことは、今後の研究の成否に大きく貢献することになるはずだが、その理由として、ともに大型開発プロジェクトが抱える多様な課題を持ち、それらが国を越えて共有できるものであり、ひとつの事例から異なった科目に対応できるケース教材が複数開発できると期待されるからだ。 また、両プロジェクトは、世間からも高い評価を受け注目されているが、現在も進化しており、今後も新たな課題や影響が予想される。研究期間の3年間で普遍的なものから特殊なものまで多くの課題を提供できると考える。また、ケース教育で世界トップクラスのハーバード・コロンビア両大学の専門家の協力を得ることで、日本のケース教材に厚みを加える内容へと高めて行くことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書にある24年度作業①~③を一部を除きほぼ完了した。 ① 産業界調査:建築・都市開発・ランドスケープ関連企業を事業規模,事業内容などに応じて抽出し、人材教育ニーズに関する聞き取り調査を行う。ニーズに適応するケース候補事例の情報も収集する。=>ケース事例の収集まで実施したが、25年度前半まで継続予定。 ②-1a デザイン教育実態調査1:予備調査:ハーバード経営・行政・法律・デザインの各大学院,ダーデン・INSEADの各経営大学院の関連ケースについて、分類調査とベストセラー・ケースの特徴について分析する。=>前科研研究課題で構築したデータベースに最新データを加えた。ダーデン、INSEADについては着手できなかった。②-1b デザイン教育実態調査1:本調査:開発に実績のある教授からの開発方法・利用実態の聞き取り調査を行う。=>アジアの教育機関で実施予定だったが、概要にある通り、25年度分の米国でと作業順位を入れ替え、米国東部の2大学で行った。また、執筆にあたり、ハーバードの協力者より指導・助言をもらう体制を整えた。 ②-2 デザイン教育実態調査2:関連調査として,デザイン政策で先行し,サムスンアートデザイン学校など、企業もデザイン教育に深くかかわっている韓国の実態調査を現地協力者を通じて実施する。=>米国での調査を優先させた為、25年度に実施。 ③ 事例選択: ①によって候補となった事例について、産業界ニーズ,教育効果,情報収集可能性,権利関係処理可能性などを鑑みて,ケース教材として開発する事例を選択する。=>米国の調査では、ケース事例の選定まで実施し、米国東部のハイライン・パークおよびネイビーヤードを選定、資料収集、定点観測などを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
①デザイン教育実態調査:シンガポール大学は,建築大学院のBeng,経営大学院のLauの協力を得る。INSEAD(仏)はケースを教育用ゲーム(Markstrat)に発展させており,その利用実態調査をシンガポール校で行う関連調査として,デザイン政策で先行し,サムスンアートデザイン学校など,企業もデザイン教育に深くかかわっている韓国の実態調査を現地協力者を通じて実施する。 ②ケース開発:選択した事例に関する公表資料の調査・検証,関係者への取材を行う。詳細情報の提供については,組織的了承が必須であり,「ケース開発へのご協力と意義」について,経営・広報・権利部門に対する説明が必要であり,先行研究では最終的了承を得るまでに2ヶ月以上かかったことも考慮したい。 ③ケース活用効果の調査:開発した試験ケースを,授業で使用し,修正を行う一方,修正版を他の教員に使用してもらうことで教材としての使い勝手を高め,さらなる修正を一定期間行う。 ④ケース教育環境の整備と公表:指導書(teaching note)を作成する。ハーバード経営大学院のケースは付属指導書があるために普及しているという指摘もあり,その傾向は先行研究でも証明されている。ケースは事実の羅列ではなく,様々な課題を潜ませた教材であることを認知してもらい,指導者の負担を減らすためにも,付属指導書の整備は必須である。さらに,ピアレビューによる相互改善,自己点検書による内省的改善などによるケース教材の理解と教授法の修得も目指す。公開は,国内のケースライブラリーとして実績のある慶応大学経営管理研究科もしくは日本ケースセンターでの販売サイトを通じて行う予定である。また、ハーバード大学デザイン大学院のWEBサイトで教材として公表する了承がとれており、そのために開発した英語版ケースの修正を実施し、25年度中の公表を目指すことが、計画に追加された。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. ケース分析のための,情報収集にかかる資料費,データベース使用料:資料費では,24年度に海外の大学院から入手した当該分野のケース及び関連資料を購入し,分析,記録するため、分析データの整理,入力に関する作業補助者の人件費を計上。 2. 海外大学院のケース分析及びケース開発者への聞き取り調査の費用:海外旅費は,INSEADシンガポール分校とシンガポール大学での開発/使用実態,最新のケースメソッドに関する調査旅費を計上。 3. ケース開発のための聞き取り調査費用及び資料代:国内旅費は,関係企業・関係者に対し,業界の人材ニーズ調査やケース対象・候補となる事例の取材をするための旅費。公表資料入手のための資料・書籍代を計上。ケース開発用資料の整理に関する作業補助者の人件費を計上。 尚、24年度に米国での調査を優先させたため、24~25年度合わせて海外旅費、人件費、資料費の配分を計画通りに進めるよう、25年度の各支出を見直す。
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