日本料理職人にとって包丁は最も大切な道具のひとつである。包丁の切れ味は料理の味や見栄えに大きく影響を及ぼす。このため包丁研ぎ技術は日本料理職人にとって非常に重要である。これまで非熟練者が包丁研ぎ技術を習得するには、熟練者の動作を見てまねるしか方法がなかった。本研究では非熟練者が包丁の動かし方、砥石を抑える力の度合などの熟練者のコツをモニター画面で見ながら包丁研ぎを練習することによってその技術を自習できる「包丁研ぎ技能伝承・習熟教育自習ツール」を制作し、早期の技術習得を可能にし、ひいては伝統産業の後継者育成に貢献することを目的とする。 平成26年度は、平成25年度に構築したシステムを改良し、システムで自習した結果を表示する際に、教師の結果と比較したデータの良し悪しをコメントとして表示し、今後の自習の方向性を促す仕組みを加えた。さらに、調理師専門学校の学生に自習システムを使用させ、自習システムの使用感の調査および、自習システムを使用した場合の習熟度の調査を行った。使用感の調査からは、カーナビのような音声でアナウンスするシステムへの改良を望む回答が多く、実現するためには自習システムに組み込んだ機器のソフトウェアの改良が必要になり、研究室レベルでは困難であるため、機器の製造メーカーとも協力し、より良い自習システムの構築を今後も進めていく。習熟度の調査から、自習システム使用回数が増えるに従い、包丁研ぎに最適な圧力となるよう動きが改善される傾向がみられた。
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