研究課題/領域番号 |
24501139
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
前村 公成 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任准教授 (30398292)
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研究分担者 |
又木 雄弘 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (10444902)
新地 洋之 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60284874)
盛 真一郎 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (00620519)
高尾 尊身 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80171411)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腹腔鏡手術 / 膵胃吻合 |
研究概要 |
本研究では腹腔鏡技術の利用による膵消化管再建術に特化した技術開発とその訓練システムを構築することを目的とした。平成24年度の研究では以下の点の業績を得た。 ①腹腔鏡下の推消化管吻合再建モデルの開発に着手した。我々がこれまでに開発した腹腔鏡手術用のオリジナルシミュレータをもとに胃および膵のシリコン製疑似臓器を生体情報に準じてシミュレータ内に配置し、吻合トレーニング用の疑似モデルを構築した。さらに本モデルを用いて様々なパタンの吻合方法を検証し、最適と思われる手術方法の探索を行った。これにより数種類のパタンを考案し訓練プログラムのプロトタイプとして作成し、その手技を動物実験へ応用した。このようにモデルを用いた吻合方法の検証は繰り返し何度も行うことが可能で、新しい手術手技の開発に極めて重要であり、独自性の高いモデルが作成できたと考えられた。 ②動物実験では手術操作手順をマニュアル化し効率的な実験プログラムを作成した。本プログラムでは腹腔鏡手術器具のセッティング、対象臓器の剥離や膵消化管吻合の準備ならびに腹腔鏡下での吻合を実施した。実験は計5回に分けて行われ、疑似モデルで開発した手技を動物の生体で再現し、実効性や効果を検証した。吻合を行った臓器は手術後に標本として摘出し病理組織学的検索を行った。実験動物を用いた手術手技の検証は実臨床に極めて近い状態を再現することが可能であり、疑似モデルから生体モデルへと連続する探索方法が非常に有用であることを実証できた。さらに本プログラムをもとに数種類の訓練プロトコルの試用版を作成し、研修医または専修医を対象にプログラムの実行を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究では以下の2点を目的としており、各事項の達成度を評価した。 ①腹腔鏡下の膵消化管吻合再建モデルの開発⇒ドライモデルの開発:本研究の基盤となる重要な物理的システムである。基本構造の設定としては予想された通りの構造を作成することができた。ただしモデルの耐久性が十分でなく、繰り返す訓練に耐えうるモデルが必要である。術式の設定に関しては本モデルで様々な吻合方法を検証することができたが、今回設定した術式が最適であるかどうかはさらに多くの動物モデルでのフィードバックが必要であると考えられた。動物モデルの開発:ドライモデルをもとに考案した吻合方法を生体モデルで再現し、実臨床に近い訓練システムを担う重要なパートである。予備実験の結果をもとに、ミニブタを用いた腹腔鏡手術を繰り返し、膵消化管吻合モデルの作成を予定通り行うことができた。問題点として一定の手術時間内に再現性のある吻合モデルが必要であるが、訓練モデルとして耐えうるシステムとしては十分といえない。動物実験までのセッティングや手術の手技をさらに簡便化し、効率の良い動物実験モデルへの改良が不十分である。 ②再建モデルを利用した訓練プロトコルの開発と評価⇒再建モデル別の訓練プロトコル開発:実験を通して考案した複数の再建モデルをもとに基本となる手術方法のプロトコルの試用版を作成した。実際に行ったプログラムではすべての手順を終了することができないものもあり、内容としては汎用性のあるプログラムとまではなっておらず、さらなる開発が必要であると考えられた。そのため、訓練プロトコルは現時点ではプロトタイプの段階であり、客観的な評価ができるまでには到達していないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、新しい膵消化管吻合法の開発とその訓練を行うためのドライモデルと動物モデルを組み合わせたシステムの基盤となる形は作ることができた。今後はこのモデルを用いて、以下の点について進めていく。 ①膵消化管吻合法については実臨床に十分対応しうると言えるまでの手技には至っておらず、より最適と考えられる術式の開発を継続する。これには特にドライモデルでの様々な試みが必要である。特に手技の改良だけではなく、手術を有効に支援するための器具等の開発が必要であり、さらに積極的に進めていく。訓練プロトコルはより実効性の高いものへと改良する必要がある。中でも動物モデルでの訓練方法に関しては、プロトコルの基本的な構成は出来上がっているものの、膵消化管吻合法自体に多くの手術時間がかかっており、訓練システムとしては機能していない。効率的な手術手技を探索し、有効な手術マニュアルの作成を推進する。 ②再建モデルを利用した訓練プロトコルの評価:当初の計画通り、ドライモデルと動物モデルの各プロトコルを連携させた総合的な訓練システムの構築を継続していく。ドライモデルでは反復練習による基礎的技能の客観的な技術評価を行い、動物モデルでは手術操作の目標を段階的に設定し、自己評価と第3者による評価がわかり易く判定できるようなシステムを作成する。 ④訓練プログラムの実施:外科修練医を対象とした訓練プログラムを実施し、他人数によるデータを集積するとともに、教育上のシステムの有効性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究を推進するにあたり以下の費用を計画する。 ①手術支援器具の開発費:手術支援器具としては様々な器具や装置が想定される。現在我々は新しい臓器圧排器具を考案し、その試作を計画している。また画像や映像を解析し安全な手術を誘導するナビゲーションシステムの導入も必要と考え、これらの機材や製作費として研究費を使用する。 ②手術モデルの維持費:ドライモデルは手術操作を繰り返し行われることで破損が生じる。私たちのモデルはシリコン素材を用いた、生体の触感に近い構造物を作成しているためにこの維持費用として使用する。 ③動物実験費:動物モデルの作成ならびに実行に関わる、動物実験費用に使用する。これには実験動物の購入費、動物管理費、手術に要する薬品(麻酔関連薬品)、市販の手術器具と修繕費、腹腔鏡装置維持費等を含む。 ④人件費:訓練プロトコルの評価者として第3者に依頼するための人件費として使用する。
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